この動産に注目! ― 飼料 ―
あと2日も過ぎれば、24節気の「白露」となり、秋の気配もいよいよ深まっていく時期となる。朝晩の気温が緩やかに下がるなか、新型コロナウイルスの感染者数も8月の後半から減少傾向に転じ、怒涛のような第7波はやっと去っていく様子である。街を歩くと、マスクをつけない人がちらほら見られるようになり、新型コロナウイルスと普通に接する日が近づいた実感が湧いてきている。この秋も夏に続き、特段行動制限なく動き回れそうなことを考えると、やはりなんとなく嬉しい。
行動の制限がないものの、この頃の物価上昇に伴って財布のひもに対する制限が徐々に厳しくなっていることがまた新たな悩みの種となる。ドル円の為替レートが140円超え、企業物価指数や消費者物価指数も上向きとなり、引いていく新型コロナウイルス感染者数の波に代わってインフレの波が一気に押し寄せている。今回のテーマである飼料に関しては、日本国内での供給が輸入に大きく頼る一面があるだけに、海外の生産・需給および為替の影響を受け、各種原料の価格は足元で高騰している。
代表的な飼料の原料である大豆ミールについては、前回のコラムでも触れたが、原料大豆の価格上昇に伴って価格が上がっている。足元では、ミールの主要調達先である中国での出荷が減少し、南米産など遠い地域から調達する必要があることもミールの輸入価格を押し上げている。財務省の貿易統計をみると、直近輸入の大豆ミールは1トン当たり約21万円(5月、輸入金額/輸入数量)と、前年同月の約17万円と比べて2割強高くなっている。また、粗飼料となる牧草については、最大産地の米国において水不足による収穫減が影響したほか、中東などの引き合いが強くなっていることから、需給バランスが悪化し、さらに円安傾向も追い打ちとなり、輸入価格が大幅高となっている。財務省の貿易統計によれば、直近7月の輸入価格は1トン当たり約6万円(輸入金額/輸入数量)となり、前年同比月比約45%高となっている。このほか、養魚用飼料として使われる魚粉も7年ぶりの高値水準に高騰している。これは主な産地であるペルーではカタクチイワシの不漁に見舞われる一方、円安や世界的に需要が好調なためである。魚粉の輸入価格(同)は7月現在、1トン当たり約20万円となっており、前年同月を約29%上回っている。
各種飼料の原料価格の高騰は最終的に生産物の価格にも影響が広がると思われ、いずれ食肉、養殖魚、牛乳、乳製品など様々なところで値上げ圧力が強まることが予想される。これで、食欲の秋において「欲」を抑える理由ができたが、嬉しいやら悲しいやら筆者の心情は幾分複雑である。
(孫記)