この動産に注目! ― スケコ ―
暦が5月に変わり、3年ぶりとなる、新型コロナウイルス対策の行動制限が行われないゴールデンウィークが始まっている。 久しぶりの遠出や帰省する人々で混雑する交通機関の様子が様々なメディアで伝えられ、新型コロナウイルスに怯えながら生活する日々もようやく終わりに近づいたという実感が湧いてきている。2022年はすでに1/3が過ぎ、コロナウイルスのせいで脱線した世の中は残り約8ヵ月でコロナ前の軌道に戻れるのか、希望が芽生えながらも懸念は拭いきれない。
新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに世界経済のサプライチェーンが混乱し、ロシアによるウクライナへの侵攻で、つながりが途切れる流れはいっそう加速している。為替相場では円安が進み、「悪い円安」という言葉を耳にすることも多くなってきている。とはいえ、円安が輸入品の価格を押し上げる一方、輸出企業に寄与する効果もある。そのメリットとデメリットの差し引きで果たして本当に「悪い」のか、それとも「良い」のか、答えを導き出す計算法はおそらくどこにもない。ただ、家計にとって当面は身近な食料品の値上がり傾向は避けられなさそうだ。
ところで、今回のテーマであるスケコについては、輸入に頼る食材として相場の上昇が懸念されている。日本国内で流通するスケコは米国産とロシア産に大別されるが、ロシア産については同国によるウクライナへの侵攻の影響を受け、供給面の先行き不透明感が強まっている。一方、米国産については今シーズンの漁獲量が減り、生産量が前年同期比2割減少すると見込まれている。3~4月にかけて実施された米国産スケコの入札会では全体的に価格が上昇しており、直近4月中旬の入札会においては推定中心落札価格が船上凍結品でキロあたり1,400円前後、陸上凍結品で1,200~1,000円の水準になったとみられ、前年同時期の価格と比べて300~400円高となったようだ。こうした影響を受け、最終製品(明太子)の価格は単純計算でキロあたり400~500円ほど値上がりするとの試算も出ている。
輸入水産物のうち、ロシア産の割合が高い品目はスケコのほかカニやウニ、サケ・マス等も挙げられる。特にロシア産カニについては5~7月が漁期の最盛期を迎えるといわれるが、ウクライナ情勢から国内業者が調達できないとの懸念もある。代替となるカナダ産などについては海外企業との競合で価格の上昇が予想されるなか、今年の年末になると、カニはもはや手が出せないほどの高級品になっているかもしれない。年越しの食卓でカニの代替品を見つけ出せるのか、筆者は家族の顔を浮かべながら、春の今頃で訳の分からない心配を始めている…
(孫記)