この動産に注目! ― スリミ ―
新年が明けてから、日本国内ではオミクロン株が猛威を振るい、新年早々、新型コロナウイルスの感染拡大はすでに第6波に突入している。一方、海外では、南太平洋の島国であるトンガで海底火山が大爆発したほか、北朝鮮は「飛翔体」の発射を繰り返し、ロシアはウクライナとの国境で軍隊を集結し、ウクライナへの侵攻を匂わせているなど、不穏な出来事が相次いでいる。元気よく、自信に満ち溢れる「寅」を期待していたのに、まさか獰猛な「寅」がこの1年をつかさどるのか、不安の中で1月が過ぎ去ろうしている。
昨年1年間は終始新型コロナウイルスの話題から離れられなかったが、今年もまたコロナの呪縛から逃げられないようだ。27日時点の全国の感染者数は8万人弱と、デルタ株時のピーク水準のおよそ3倍になっている。オミクロン株による感染のピークアウトは2~3月になるとの予想がある一方で、オミクロン株の亜種による置き換わりでピークアウトしないとの見方もあり、3回目のワクチン接種から逃げられることは無理そうだ。
新型コロナウイルスの脅威から逃れられない中、世の中の様々な動産もその影響を受け続けることとなる。今回のテーマであるスリミも例外ではない。水産練り製品の原料であるスケソウダラのスリミは近年、取引価格が上昇し続けている。スケソウダラの漁期は例年1~4月の春季(Aシーズン)と6~10月の秋季(Bシーズン)の年2回となるが、この1~2年間の漁期では漁獲されたスケソウダラの魚体が小さく、生産効率が悪いうえ、新型コロナウイルスの影響で主要生産国の米国では人手が足りず、人件費が上がっていることも追い打ちとなっている。このほか、欧米や中国の需要も旺盛で、価格を押し上げる要因となっている。みなと新聞の調査によれば、米国産スリミ(洋上FA級、小口需要家渡し価格)の昨年秋季時点の価格は640円/kgとなっており、前年同期より約1割上昇している。これは2008年秋季(同700円)以来の高値水準となる。スリミの需要に対して品薄の状況が今後も続くとみられ、スリミ価格もさらに高騰すると予想される。
スリミ価格の上昇や新型コロナウイルスの感染拡大に伴う物流費の高騰を受け、大手魚肉ねりメーカー各社は今春から価格を改定する計画を相次いで発表し、平均値上げ率は1割前後に上る。コロナ禍の中で物価上昇の波がどんどん広がり、日銀が目指す2%の物価目標の達成も近いかもしれない。しかし、物価が上がれば賃金も上がるという好循環は本当に生まれるのか、期待を持ちつつも疑問がぬぐえないのは筆者だけだろうか…
(孫記)