この動産に注目! ― 化学肥料 ―
年の瀬に近づき、スーパーなどに行くと、クリスマスのグッズや正月飾り用の鏡餅なども目に入るようになり、1年の終わりを意識させる場面が多くなってきている。昨年と同じ、今年の話題もまた「新型コロナウイルス」に尽きており、現代の医療システムから守られ、感染症の恐怖は遠い中世の話だと思い込んてきた筆者にとっては、ウイルスの力を知らされる1年であった。最近になって、ワクチンの接種が進むにつれて新規感染者数がだいぶ落ち着いてきており、これでようやく「終わり」が見えてくると微かに期待が膨らんだ。
しかし、南アフリカでは危険な変異種「オミクロン株」が発見され、世界保健機関(WHO)は、この変異種を最も危険で要注意として、「懸念される変異株」に指定したことも伝えられている。既存のワクチンがオミクロン株に対してあまり効かないとの見方も出ており、この変異種がデルタ株などの変異種のように世界中で猛威を振るう可能性はないのか、懸念が高まっている。世界各国の株式市場は、ようやく収束しはじめた新型コロナウイルスの感染状況が逆戻りすることへの警戒から、揃って急落する場面を見せているが、オミクロン株の影響は実際どこまで広がるのか、先行きが見通せない状況はしばらく続きそうだ。
ところで、今回のテーマである化学肥料については、オミクロン株等の変異種に翻弄される世界の経済状況に影響され、大きな変動が続くと思われる。世界全体では穀物への需要が旺盛であり、米国やブラジルといった穀物生産国での肥料需要が増加し、肥料価格が引きずられて上昇している。また、化学肥料の主要原料であるアンモニアの生産で大量に消費される天然ガス価格の高騰も化学肥料価格の上昇につながっている。このほか、肥料消費大国の中国では、自国の食料安全保障を重視する姿勢から、肥料備蓄を強化する一方で輸出を引き締めていることも化学肥料の価格に影響を与えている。JA全農は10月末に令和3肥料年度(毎年7/1~翌年6/30)春肥の単肥価格について値上げを発表し、尿素については国産、輸入ともに前期比17.7%高とした。肥料価格の上昇が穀物価格を押し上げることも想定される中、オミクロン株の出現がさらなる追い打ちとなるのか、注目される。
デルタやオミクロン、コロナ禍については「一難去ってまた一難」といっても過言ではない。あと2週間したら、今年の漢字がいよいよ発表されるが、筆者の候補「難」で決めたいと思う。
(孫記)