この動産に注目! ― 魚粉 ―
関東地方では16日に梅雨明けしたとみられ、太陽の照り付けは一気に厳しくなり、本格的な夏が訪れている。ニュース報道をみると、東京の街では人出がかなり増え、緊急事態宣言下にもかかわらず、夏のレジャーを楽しみたいという人々の気持ちも気温の上昇とともに急激に膨れ上がってきたようだ。あと数日が経つと、東京オリンピックもいよいよ開催日を迎える。入国する大会関係者の増加による感染拡大を防ぐため、「バブル方式」と呼ばれる対策が行われているが、入念に作られたバブルの「膜」は本当にウイルスの動きを止められるかが、これまでの緊急事態の繰り返しを考えると、疑念も残る。
新型コロナウイルスの動きを封じ込むため、世界中で新型コロナウイルスのワクチン接種が進んでいるものの、ウイルス自身もどんどん変異して人間への対抗を強めていている。「アルファ株」や「デルタ株」、いろいろな変異種が出てきており、最近ではペルーで猛威を振るう「ラムダ株」も新たに注目され、その感染力がインドから広がった「デルタ株」よりも強いのではないかと懸念されている。絶えずに出現してくるこの株、あの株、いつかギリシヤ語のアルファベット24文字がすべて新しい株の名前として使われる日が来る可能性もゼロではなくなってきているようだ。
ところが、ペルーといえば、今回のテーマである魚粉とも大きく関係している。魚粉は養殖魚などの飼料として使われており、その原料となるカタクチイワシの漁獲においてペルーが世界最大の生産国となる。同国では、毎年夏と冬の2漁期でカタクチイワシ漁が行われるが、今年の冬漁(4~7月)の漁獲枠が市場予想を大きく下回った。一方、中国での飼料需要が増える関係から、世界全体の需給がひっ迫するとの懸念が広がり、魚粉の国際価格が押し上げられている。世界銀行が公表している国際商品価格によれば、6月時点の魚粉価格は1トンあたり1,505ドルと、前年平均と比べて約5%上昇している。原料価格の上昇に加え、為替の円安や海上運賃の影響で日本国内の魚粉価格も上昇傾向となっており、コロナ禍で外食向け出荷が減少する中、養殖魚の生産業者などにとって追い打ちとなりそうだ。
魚粉価格は2000年以降は長期的に上昇傾向で推移しており、養殖業者の間では、魚粉の代わりに他のたんぱく源を利用する動きも徐々に広がっている。しかし、代替品としてもっとも多く利用される大豆粕については、価格も上昇していることから、代替品として利用してもコスト削減効果が薄れている。全体的に飼料価格の上昇傾向が長引く中、養殖魚の値上げ圧力も徐々に強まるかもしれない。養殖ブリやサーモンなども手軽に買えなくなる日がくるのか、コロナ禍の中で不安のタネがますます増えていく…
(孫記)