この動産に注目! ― 小麦 ―
東京では14日に桜の開花が宣言され、また花見の季節が訪れている。1年前の花見は緊急事態に伴う自粛でできなかったが、今年も同じように緊急事態の中で終わってしまうのか、21日以降に関する政府の判断が気になるところである。新型コロナウイルスの対策となるワクチン接種は、開始から約1ヵ月経ち、厚生労働省の発表によれば、15日時点で29万回実施したという。1億2千万中の29万という微々たる数字で、世界全体の接種回数ランキングをみても50位以下というレベルは、決していいペースとは言い難い。ただ、接種回数を示す日々の数字はおおよそ増加傾向となっており、それだけでもありがたいかもしれない。
数字の増加という点で、この頃は仮想通貨のビットコインの上昇もある意味同じことである。1ビットコインの価値は一時6万ドルを超え、昨年末からの上昇率は200%にも上る。その時価総額は米グーグルの親会社であるアルファベットの時価総額に匹敵する規模になっているとも言われている。新型コロナウイルスによる衝撃で世界各国では金融緩和が進む半面、実体経済の回復が思うように進んでおらず、カネ余りの状態が続く中で、仮想通貨にも大量の資金が流入していることが背景にあるとされる。しかし、実物資産による裏付けのないパソコン上の数字「1」には6万ドルの価値もあるということに関しては、驚くばっかりである。この状況を考えると、世のなかで新型コロナウイルスを嫌がる人だけでなく、大いに感謝している人も多く存在していることはなんとも皮肉なことである。
ところで、高値で言うと、今回のテーマである小麦も約7年ぶりの高値で推移している。世界最大の輸出国であるロシアは国内の安定供給を図るために輸出関税を引き上げたほか、米国産地において寒波の影響で冬小麦の生産量が減少する予想や、アルゼンチンの今年度の生産量が乾燥に伴う作付けの遅れで減少する予想が大きく影響している。小麦価格の国際指標となるシカゴ先物の価格は15日時点で1ブッシェルあたり6.45ドルと、昨年月につけた安値から約4割弱上昇している。小麦価格は2月下旬に一時6.8ドルを付け、2014年以来の高値を記録したが、その後は大豆相場等に連動してやや調整したものの、依然として高値圏で推移している。日本国内では、政府が小麦の国際価格に応じて、輸入小麦の売り渡し価格を定期的に改定しているが、4月に予定される改定では売り渡し価格の上昇も見込まれる。
筆者はコロナの影響で在宅時間が増える中、時間つぶしのつもりで小麦粉でパン作りなどをチャレンジする機会も多くなっている。酵母で膨らむ小麦粉の生地を見るのも、触るのもなかなか面白い。仮想通貨で資産を膨らます能力は持ち合わせていないが、せめて膨らむ生地を扱う能力をもっと上達させたいと思う。
(孫記)