この動産に注目! ― アルミ二次合金 ―
年末年始の休みは昨年と比べてやや短いものの、外を出歩く気持ちを抑え込んで家に引きこもったおかげで、意外とたっぷり休んだ気分である。ところが、新型 コロナウイルスは新年早々で「大活躍」し、東京の感染者数は日に日に増え、7日時点では2千人を超えており、過去最多を更新している。1都3県では再び緊急事態が宣言され、期間は2月7日までとなっているが、約1ヵ月でウイルスが大人しくなってくれるのか、甚だ疑わしいである。今週末には強い寒波が再び日本にやってくることも伝えられており、寒さに乗じてウイルスがさらに暴れ、感染者の数を示すグラフの棒線がどこまで突き抜けていくかが、想像するだけでぞっとする。
突き抜くといえば、年明け後の株式市場は堅調に推移し、8日の日経平均株価は1990年8月以来ほぼ30年ぶりに2万8000円の大台を回復している。日本では1都3県が再び緊急事態に突入し、世界全体でも新型コロナの感染者数が急増する中、経済への懸念が再び強まっているにもかかわらず、株価の急上昇には驚かずにはいられない。米国大統領選でバイデン氏の勝利が議会の認定で確実になり、今後は強力な景気刺激策が期待されるという背景があるものの、コロナ禍から抜け出すのにまだまだ時間がかかる中で果たして株価市場が見込んでいる好景気がいつ来るのか、先は待ち遠しい。
上昇ということに関しては、今回のテーマであるアルミ二次合金にも共通している。アルミ二次合金の価格はこのごろ、上昇が続いており、鉄鋼新聞が公表しているアルミ二次合金地金(ダイカスト用)の2020年12月時点の価格は6ヵ月続伸の1トンあたり317千円と、前年同月比8%高となっている。自動車のエンジン部品などに使われるアルミ二次合金の需要は国内自動車メーカーの生産回復を受けて増回傾向となっているほか、新型コロナウイルスによる影響を抑え込んでいる中国の経済活動が正常化しているため、日本向けの輸出が減少していることが価格を押し上げる要因となっている。足元ではアルミ二次合金の原料となるアルミスクラップの価格も上昇しており、今後は国内合金メーカーが原料価格の上昇を製品価格に転嫁することも予想され、アルミ二次合金の価格が一段と上昇する可能性は否めない。
年末年始にかけて新型コロナウイルスは相変わらず猛威を振るう中、株式市場やアルミなどの素材市場はすでにポストコロナを見据えた動きとなっている。日本では2月からワクチンの接種が開始される予定となっているようであり、われわれの日常生活にも明るい兆しが見えてきているが、ワクチン接種による効果も株式市場の上昇と同じようなスピード感を持って表れてくることに期待したい。
(孫記)