Go to キャンペーン
2021年以降の世界経済の行方を占うと言っても過言ではない米国大統領選挙ですが、最終的に民主党のバイデン元副大統領の勝利となったようです。ようです、というのも26日になりようやく、トランプ大統領が政権を手放す意向を示しているものの来年1月21日に予定されている大統領就任式がスムーズに行われるかどうか、確実とは言えない状況がつづいているからです。ただ債券や為替、原油、その他商品相場については今のところ目立った変化もなく、選挙前の予想どおりとなっており、バイデン大統領の政策による影響を織り込みつつある状況となっているようです。
国内の動きについては、本コラムでも7月以降、触れてきたGo toキャンペーン(トラベル、イート、商店街)が11月中旬以降、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い見直しを余儀なくされています。
国内の感染者数は11月の月初時点では約10万人でしたが、中旬以降の感染者の急増により29日時点で14万人を超え、1ヶ月で40%増加しており、12月の第1週には15万人に、年内に20万人に達する可能性も視野に入れる必要がある水準と言えます。
重症患者の増加により医療機関の切迫した状況も高まっており、この1ヶ月の「第三波」で感染者が40%以上増加してしまったというのは、Go to キャンペーンを維持拡大していく上では極めて厳しい状況といえます。既に一部の地域についてはキャンペーンの対象外としたり、飲食店への営業自粛の動きも見えつつあります。クリスマス、年末年始と旅行観光のみならず飲食店事業者の経営に大打撃となることは間違いないでしょう。
感染拡大の要因はキャンペーンの拡大であるという明確な証拠はないですが、人の移動に伴う人間の接触の機会が増えていることは間違いなく、一定の規制強化はやむを得ないでしょう。
ただし、7月の本コラムでも述べているように、Go To関連の市場規模は旅行が約15兆円、外食が約25兆円、イベント関連が17兆円、合計で60兆円近くと推計されています。日本のGDPが約500兆円、その6割の300兆円が個人消費であることを考えると、政府がGo To関連市場の需要喚起に力を入れる背景を理解する必要があるでしょう。一方で感染拡大に伴う医療体勢の崩壊と経済対策の両立が今後も最重要課題となることは間違いありません。
インフルエンザの流行期とかぶってくるこれからの時期、感染の広がりをどうやって抑制するかということと、景気や雇用も含めた経済をどうやって元の水準に近づけていくか、これまでに蓄積された知見やノウハウを活用すれば、両立は可能であると信じています。 SNSにあった「Go To 「おひとり様」キャンペーン」というのも「核家族化」「個食化」の流れの中で有効なのかもしれません。
思えばちょうど1年前の昨年11月の本コラムのテーマは「豚コレラ」「アフリカ豚コレラ」の正式名称がCSF(Classical Swine Fever)とASF(African Swine Fever)に統一される、というものでした。ウイルスや感染症との闘いは有史以来続いていますが、昨年あれだけ国内・中国でも大問題となった「豚コレラ」による豚肉の供給不足や価格高騰といった話題は現時点では耳にすることはありません。新型コロナウイルスのワクチン開発も順調に進んでいるとの報道もあります。「明けない夜はない」という言葉を信じ、もうしばらく耐える時期を過ごさなければならないのかもしれません。
(堀記)