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2020-11-11 注目動産

この動産に注目! ― チタン ―

 気温が下がるとともに空気が乾燥し、東京をはじめ日本各地で新型コロナウイルスの感染者がまたもや増えはじめ、感染拡大の第三波の懸念が高まっている。せっかく秋晴れの空が広がっているのに、またおとなしく外出を控えなければいけないことを考えると、少し残念な気もする。年が終わるまであと2ヵ月弱となり、新型コロナウイルスの感染拡大の中で始まった1年も、また感染拡大の中で終わってしまいそうだ。

 年の終わりに近づく中、世界中が関心を寄せていたアメリカ大統領選の投票結果はようやく決着がついている。トランプ大統領があきらめずに複数の州で選挙の結果を巡って法的に争う構えを見せているものの、すでに多く国のリーダーたちが次期大統領となるバイデン氏に祝賀するメッセージを送り、アメリカの新政権に焦点を合わせて次の一歩を踏み出そうとしている。4年間の任期中に話題が絶えなかったトランプ大統領に取って代わり、次期のアメリカ大統領となるバイデン氏は、トランプ時代の「アメリカ・ファースト」をどこまで修正するかが注目される。

 ところで、バイデン氏が大統領選の勝利を宣言してから2日後に米ファイザーはドイツのビオンテックと開発している新型コロナウイルスワクチンの候補について治験で90%を超える確率で感染を防いだことを発表した。これまで新型コロナウイルスとの戦いで守勢が強いられる状況もやっと態勢逆転に向けて大きく前進しそうだ。新型コロナウイルスで止まった人の流れが再び動き出せば、世界経済の歯車も元のように回転し、今回のテーマとなるチタンをはじめ、コロナ禍で影響を受けている多くの動産の需給も一気に好転するかもしれない。

 チタンについては、レアメタルの一種として軽さや強度、耐食性等の特性から航空機の機体やエンジン部品、産業機械などに多く使われている。近年は航空機関連需要が好調である一方、オーストラリアなど鉱石の主要産地での産出量の減少や品位低下に加え、中国などの需要増による影響でチタン原料価格は2018年から上昇しつづけてきた。しかし、コロナ禍で状況が一転し、航空機需要が一気に冷え込んだうえ、一般産業機械向け需要も減る中、価格上昇の勢いも衰えつつある。このごろ、国内チタン中間原料の生産者とチタン展伸材メーカー間の2020年度の価格交渉は、前年から横ばいで決着になったことも伝えられ、2年連続で上昇していたチタン価格には歯止めがかかるようになっている。今後は航空機関連需要が回復に転じても、2019年の水準まで戻るには約4~5年かかるとの見方もあり、チタン市況も徐々に重くなりそうだ。

 筆者の家の上空は飛行機の通り道になっているようで、以前から旅客機が頻繁に通過している。最近は目撃する確率もだいぶ上がってきており、通り過ぎていく旅客機を見上げるたびに新型コロナウイルスの脅威も目撃頻度と比例して弱まっていくことをつくづく願う。

(孫記)

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