Go to 商店街
秋分の日が過ぎ、朝晩はだいぶ涼しくなって来ました。新型コロナウイルスの感染状況も公的・個人的な各種対応策が浸透してきたのか、落ち着きを取り戻しているようです。
8月の本コラムでは国内の感染者数が9月末には中国の感染者数を上回る可能性を指摘していましたが、そのスピードは若干緩やかになっています。ただ10月中旬には既に新規感染者の発生をほぼ完全に抑制している中国を上回ることは間違いないでしょう。ただ世界全体で見ると感染者数はこの1カ月で800万人増加し3,400万人を超え、死亡者数も100万人を超えています。
10月に入り気温が下がり空気が乾燥してくると日本ではインフルエンザの発生が始まる時期になります。今年はインフルエンザと新型コロナウイルスの感染が同時に拡大した場合を懸念する声が特に医療機関から上がっています。ただ、今年の秋から冬にかけてのインフルエンザの感染は前年に比べれば、大幅に減少すると思われます。背景は色々あるでしょうが公共の場でマスクを着用したり、手指の消毒を行う機会が上がっていること、インフルエンザワクチンを接種して備える方の増加(中高年齢以上の層で特に)が見込まれること、等が挙げられます。
「新しい生活様式」が浸透してためなのか、7月の本コラムで触れた時には開催が危ぶむ声が多かった「Go To キャンペーン」ですが、「Go To トラベル(国土交通省・観光庁)」は感染状況が落ち着いてきたことやマスメディアでの報道等もあり、9月19日から22日の4連休を中心に全国各地の観光地に人が戻り始めるなど着実に浸透しているようです。
私も4連休に関東の自宅に戻り、浅草寺近辺を何十年ぶりに散策してきました。大半が国内からの旅行者でしたが、かなりの人出の多さに驚きました。人力車のドライバーの方たちも数か月ぶりの人通りの中、笑顔で接客をされているのが印象的でした。
一方、農林水産業が主催する「Go To Eat キャンペーン」については、準備は整いつつあるようですが繁華街を中心とした飲食店の営業時間拡大の方が影響力が大きいのか、さほど盛り上がりにはかけているような気がします。
そうした中、開催の見送りが続いていた「Go To イベント」に加え、「Go To 商店街」というキャンペーンも開始されることが発表されました。
「Go To イベント」については7月に触れたので割愛しますが、「Go To 商店街」はなかなか興味深い取組だと感じています。
少子高齢化、消費生活の変化等により、バブル経済崩壊以降、全国各地の商店街は規模の縮小を続けています。経済産業省や中小企業庁の調査によれば、2007年から2014年にかけて小売全体の売上(年間販売額)は135兆円から122兆円と9.6%減少しているのに対し、商店街の売上は53兆円から45兆円と15.1%減少しています。事業所数、従業員数をみても商店街に属する事業所数、従業員数は全体を下回っています。2018年度の商店街調査でも店舗数や空き店舗率は前回調査(2015年)を上回っており、ヒト・モノ・カネの動き全般について縮小に歯止めがかかっていない状況にあることが推察されます。
全国各地の商店街では経営者の高齢化による後継者問題、店舗等の老朽化、外国人観光客の受け入れ態勢の整備等、課題は多々あるようですが、今回のコロナ禍で逆に身近な商店街や身近な街の良さが再発見される可能性は高いと考えています。全国どこに行っても同じ雰囲気でワンストップでなんでも揃う大型商業施設もいいですが、それぞれの街に固有の歴史や文化が感じられる街並み、特産物、人とのふれあいという大型商業施設にはない観点から再活性のポテンシャルは十分あるでしょう。
現在はストップしているインバウンド消費も近いうちに復活することは確実でしょう。そうした時に、日本にもともと居住している人、海外からの観光客、大型商業施設と商店街のどちら魅力を感じることができるのか。
「Go To 商店街」の対象となる商店街イベントへの助成は金額的には上限が300万円とわずかかもしれませんが、キャンペーンを通じて日本独特、地域独特の商店街を再活性化できるのか、今後の日本経済の将来性について試されているのかもしれません。
(堀記)