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2020-06-30 業界動向

V字回復は目前

 沖縄では一足先に6月12日に梅雨が明けましたが、筆者が4月から常駐している近畿地区では、梅雨らしい蒸し暑い天候が続いています。東京都、埼玉県、北海道等感染者が増加傾向にある地域もあり、まだまだ安心はできませんが6月に入り日本国内の新型コロナウイルスの感染は峠を超えたといってよさそうです。5月末時点での感染者は17,000人弱、死亡者数は900名弱でしたが、本コラム執筆時点での感染者は約18,000人、死亡者数は963名と増加はしていますが、全国的には感染拡大を防止する様々な取り組みが浸透しており、終息には至らないものの増加傾向には歯止めがかかっているといえるでしょう。
 緊急事態宣言発令時には抑制されていたヒト(人)の動きが徐々に回復するにつれ、モノ(物流)とカネ(貨幣)の動きも戻りつつあります。
 先日、ある観光地(寺院)を訪れたところ県外からの来訪者が大半を占めていることに気づきました。海外からの旅行者と思われる方を見かけることはありませんでしたが、一部の国については渡航制限が解除になるとの報道もあり、観光客が戻れば、さらにヒト・モノ・カネの動きが加速し多くの業種で経済活動が活性化されるでしょう。

 ただ世界全体でみると新型コロナウイルスの感染抑制・終息には程遠い状況です。感染者はこの1か月で約1.7倍増加し、ついに1,000万人を超え、死亡者数も50万人(前月の約1.4倍)を超えています(6月30日現在)。先月との比較では、感染拡大の中心が欧州から中南米やインド、中東地域の国々に移りつつあること、世界で最も感染者が多い米国でも感染の中心が南部各州に移りつつあることなどが挙げられます。
 世界の各国が感染拡大防止と経済活動の再開、需要刺激を天秤にかけながら各種政策をとる中、日本をはじめとする東アジア諸国や欧州各国のように新型コロナウイルスとの対峙方法が浸透し実効性が上がってきた国と、逆に感染拡大し経済活動への悪影響が顕在化してきた国に分かれてきたようです。
 これから本格的な夏が到来する北半球と冬に入っていく南半球の季節の移り変わりも含め、注意する必要があるでしょう。

 日本では緊急事態宣言下で制限されていた経済活動が復活しつつあります。飲食店も様々な工夫をしながら営業活動を再開していますし、ライブハウスや映画館や美術館、博物館等多くの人が集まる施設も感染予防に配慮しながら営業を再開しています。本コラムでも数回触れた百貨店売上概況(日本百貨店協会発表)によれば、5月の売上高総額は前年同月比▲65.6%減の1,515億円でした。ただし内訳をみると月の後半から順次営業再開が進んだことにより、品目別にみると家電は前年同月比▲21.3%減、食料品は▲45.2%、特に生鮮食品については▲23.7%となりました。全体の減少幅に対するこの食品関連の減少幅との格差をどう見るか。見方は分かれるとは思いますが、個人的には一般消費者の「消費」への強い欲求の現れではないか、と感じます。食品でしたら手ごろな価格で良質な商品を食品スーパーや量販店でも購入できるはずです。それでもあえて休業明けの百貨店で食品を購入しようとする消費者層が一定数以上存在することは買い物の楽しさを抑圧されていた反動の現れとみることはできるのではないでしょうか。悲観的なニュースを目にする機会は引き続き多いですが、プロ野球やサッカーJリーグも再開しました。現時点では無観客試合が行われており完全に従前と同様の形で行うことはできないとはいえ、応援方法については新たな取り組みが多数試行されています。

 買い物、映画、カラオケ、外食、等々これまで日常生活に溶け込み何気なく行ってきた様々な活動が、あらためて日常生活に戻ってきてくれたことのありがたみを感じる機会が増えています。私事ですが、先日、認知症で老人ホームに入居している父に5か月ぶりに面談することができました。実父が入居している施設だけでなく全国の介護施設・医療施設で各種業務に従事される多くの方々の不断の努力により、平穏が保たれていることのありがたさにあらためて感謝しています。アフターコロナの環境下で今後はどこの地域から経済が回復するのか、世界中で停滞している投資資金をどの地域に投入すべきなのか。ヒト・モノ・カネの分野で日本が再び見直されるチャンスが到来している事は間違いないでしょう。こうしたチャンスが訪れている今こそ、次の時代に向けた取り組みを先駆けて実施していく必要があるでしょう。

(堀記)

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