回復の兆し
世界全体での新型コロナウイルスの感染者の累計は先月の2倍近くの586万人、志望者数も1.6倍の36万人を超えました(5月29日現在)。1カ月前との比較では、米国での死者数が10万人を超えたこと、ブラジルやロシアでの感染が急拡大しスペインやイタリア等の西欧諸国での感染者数を超えてきたことが挙げられます。
日本国内では、亡くなった方が前月の2倍となりましたが、感染者の累計は前月の1.2倍程度とだいぶ落着きを取り戻し、5月26日には全国的に緊急事態宣言も解除になりました。今週に入り北九州市でクラスター感染が発生しているようですが、一時のパニック的な状況は大幅に改善し、徐々にではありますが、新型コロナウイルスとの付き合い方が浸透している気がします。
経済統計や景気指標は史上最悪という報道が盛んになされていますが、個人的には景気は底打ちし、2段底となる可能性は低いのではないか、と感じています。
5月22日に発表された全国百貨店売上高は前年同月比72.8%減と統計開始以来最大の減少率となりました。インバウンドについても購買客数は99.5%減、売上高は98.5%減となりました。
日本政府観光局(JNTO)が5月20日に発表した訪日外客数は2,900人(前年同月比99.9%減)と統計を取り始めた1964年以降、過去最少となりました。多くの国において海外渡航制限や外出禁止措置が取られていること、日本においても検疫強化、査証の無効化等の措置の対象国が拡大されたため、訪日外客数はほぼゼロとなりました。訪日外客数がゼロになる可能性はありますが、2,900人以上となる確率は地球の人口を考えると遥かに高いでしょう。渡航禁止が直ちに緩和されることはないでしょうが、外出禁止措置は世界的に見れば緩和されている中、比較的感染が抑制されている日本をはじめとするアジア諸国から渡航禁止が緩和される可能性は高いと見ています。
景気の先行指標である工作機械受注についても、4月の受注速報は前年同月比の51.7%の約560億円となりましたが、実は工作機械の受注額は2018年の第4四半期から前年を下回る実績が続いており、前年比70%程度の状況が続いています。2009年はリーマンショックの影響で年間受注額が前年の1兆3,000億円から4,000億円程度にまで一気に減少しましたが、今回はそこまでの減少幅は今のところ見られません。これは、医療機器や衛生用品の他、コロナショックにともなう新たなニーズに対応するための工作機械が根強く発注されているためと考えられます。
3月までは連日のようにドラッグストアや量販店の店頭にマスクを買い求める長蛇の列がよく報道されていましたが、最近では使い捨てマスクが50枚で1,000円を切る水準にまで下がっており、5月に入り急速に値下がりしているように見受けられます。
これはマスクの供給が十分となったことだけでなく、使い捨てマスクの価格の高さに不満を感じた消費者が布製マスクを手作りする機会が増えた事もあると思います。
乾麺や冷凍食品などの加工食品やトイレットペーパーやティッシュペーパーが店頭から消失することもなくなりました。野菜の価格は高めで推移していますが、食肉や魚などの価格は安定しています。緊急事態宣言下で営業を自粛していた店舗や飲食店も営業を再開したり、営業時間を延長する動きがみられるようになりました。
ニュー・ノーマル New Normal(新常態)という言葉を多く耳にするようになりました。実際、ワクチンや新薬の開発は完了していませんし、コロナショック以前のような生活様式に戻ることは考えにくいでしょう。しかし、様々な場所で見られるさりげない配慮や優しさ、飲食店やレジャー施設での日本らしい様々な工夫を見ていると、統計やデータに現れない多くの取り組みや動きが経済を下支えし今後の景気回復、カネやモノの好循環につながることは確実とみています。
ニューノーマルのモノの流れの中から、アフターコロナ時代の新たな芽を見つけていきたいと思います。
(堀記)