この動産に注目! ― 鋼材 ―
新型コロナウイルスの感染が拡大する中、今年の花見シーズンも自粛ムードの中で寂しく終わってしまい、桜の花は風に吹かれてはかなく消えてしまったものの、新型コロナウイルスはしぶとく居残り、人間との先の見えない戦いだけが繰り広げられている。アメリカなど海外の感染者数の増加ペースをみると、日本のほうはまだ少ないと多少安心する半面、これからは他国を追っかけていくではないかと心配する気持ちも日に日に膨らみ、まるでバランスボールを乗っているようで、ちょっと油断したら一気にバランスが崩れてひっくり返されるではないかと、落ち着かない。
感染を抑制するため、政府は緊急事態を宣言し、人と人の接触を7~8割の削減を目指している。しかし、9割まで削減しないと感染拡大が止められないとの専門家の試算が出ており、ウイルスの勢いを抑え込むには残される時間が多くないと指摘する声も少なくない。人と接触しない対策の一つとしてテレワークが推奨されているが、筆者もテレワークに突入してすでに2週間近く経っている。通勤電車に乗り込む必要はなくなったものの、リモート操作のため時々ガタガタと動き出すパソコンと睨めっこすることが増えるなど、オフィスでの勤務時と違うところでストレスが溜まっている。今まで経験したことのないテレワークという仕事環境に適応するのにまだ時間がかかりそうだ。
新型コロナウイルスによる感染が拡大する中、世の中の生産活動が滞っており、影響を受けている物もトイレットペーパー程度で済まされなくなっている。今回のテーマである鋼材については、価格の下げ圧力がかなり強まっている。すでに電炉大手の東京製鉄は4月の契約価格を前月比約1割引き下げたことが伝えられている。米中貿易摩擦で製造業からの需要はもともと停滞気味だったが、新型コロナウイルの影響で荷動きが一段と鈍くなっている。また、中国や韓国などの鉄鋼メーカーは在庫圧力の低減を図るため、日本向けの輸出価格で攻勢を強めており、国内相場を圧迫している。鉄鋼新聞が発表している3月の市中相場をみると、建築用のH形鋼の価格(東京市場、高安値の中間値)は1トンあたり77,500円と前年同月比約12%安、機械や家電製造で多く使われる熱延薄板の価格(同)は1トンあたり77,000円と、同9%安となっている。足元では、先行き不透明感が強く、鋼材を取り囲む需要環境がさらに悪化する可能性も残る。
テレワークを始めた筆者は、家に閉じこもる時間が一気に長くなり、外出といえば、食材を仕入れるためスーパーに行く程度である。気のせいなのか、スーパーの混雑度合いは前と比べてだいぶ上がっている。これによって新型コロナウイルスに感染するリスクが増える可能性を考えると、今後は時差出勤ならぬ、時差買い物する必要も出てきそうだ。しかし、新型コロナウイルスから逃げ回る日がいつまで続くか、その答えは待ち遠しい。
(孫記)