この動産に注目! ― 和牛子牛 ―
3月に入り、気温は上昇気味で、家の近くにある公園の桜はすでに開花している。ソメイヨシノではないものの、春を感じさせるのに十分である。この季節になると、例年なら休日にあれこれを企画してよく出かけるのに、今年は新型コロナウイルスと数少ないマスクの備蓄を考えると、出歩きたい気持ちを抑えておとなしく家に引き籠るしかない。ちょっとした外出といえば、近所のスーパーに行く程度だが、品薄のコメ売り場や家庭用紙の売り場が目に付くと、いやにも不安感に襲われてしまうのが困ったことである。
トイレットペーパーが売り場から消えたのがつい1週間ほど前からだったが、筆者の家ではその直前に1パックを購入したばっかりで、紙切れで狼狽してしまう目に合わなくて幸いである。SNS上で誤った情報が流れたとはいえ、日本にとって最大の貿易相手である中国から様々なものが輸入されているのに、なぜトイレットペーパーが標的としてピックアップされたのかなかなか興味深いである。しかし、インターネットを使って調べれば簡単に入手できる情報があるにもかかわらず、SNSの話をいかにも簡単に信じてしまうこの現実はやはり恐ろしい。
新型コロナウイルスで需給状況が大きく変わるものは上記のトイレットペーパーだけでなく、今回のテーマである和牛子牛も大きな影響を受けている。農畜産業振興機構が公表している和牛子牛(黒毛和種)の取引価格は2月時点で1頭あたり約72万5千円と、前年同月比7%安となっている。和牛子牛は繁殖農家の減少による供給不足の影響から、その価格が長期にわたって堅調に推移しており、足元の価格も下がったとはいえ、数年前と比べるとまだかなり高い水準にとどまっている。しかし、和牛の枝肉価格は昨年から需要の伸び悩みにより下落がつづき、ここにきて新型コロナウイルスによる影響で訪日外国人観光客の消費も急減し、枝肉価格がさらに下落することが懸念されている。枝肉価格の動きにつられて肥育農家による和牛子牛の仕入れも慎重となり、和牛子牛価格の調整圧力も強まっている。今後は、新型コロナウイルスの影響が長引けば、和牛の消費がさらに悪化し、和牛子牛の価格も一段と下がる可能性は否定できない。
ところで、筆者は休日の外出を控えるようになったことから、休み中のほとんどの時間が三食の準備と三食に費やされ、昼寝の時間も入れたら、まさに起きて食べて寝てまた食べて寝ての繰り返しという恐ろしい事態になっている。あと2ヵ月程度したら、また健康診断を受ける時期となるが、新型コロナウイルスが早く収束してもらわないと、BMIの数値がさらに悪化してしまうことが、正直に新型コロナよりも大きな心配事である。
(孫記)