コロナショック(その2)
先月のコラムでは新型コロナウイルスの感染拡大と想定される経済活動への影響について触れました。先月のコラム執筆時点(1月29日)では中国での感染者が8,000人近くに達し死亡者も170人となっているとの報道がありましたが、残念ながらその後も感染拡大は止まりません。worldometersによれば、感染者は82,790人、死者は世界中で2,817人と1ヵ月で感染者は10倍以上、死者は16倍以上となっています。(2月28日現在https://www.worldometers.info/coronavirus/)
国別に感染者数・死者数を見ると、中国が78,514人、2,747人と最も多く、韓国(1,766人、13人)、イタリア(655人、17人)、イラン(245人、26人)、日本(207人、4人)と続きます。今週に入りイタリアとイランでの感染が急拡大していること、特にイランで亡くなる方の比率がその他の地域に比べて非常に高い点が気になります。船内での感染が拡大したダイヤモンドプリンセス号の乗客は国とは別枠とされ、それぞれ705人、4人となっています。同船の乗客・乗員は合計で約3,700名とされており、船内での感染者は2割近くと非常に高くなっています。
天皇誕生日の一般参賀、東京マラソンの一般ランナーの参加取りやめ、それ以外にもアーチストのライブが中止されたり、Jリーグ・Jリーグカップも3月15日までの試合を全て延期、プロ野球のオープン戦は無観客試合で開催等々、数多くのイベントが中止・延期されており、経済に与える効果が大きくなっています。27日には安倍晋三首相が全国全ての小中高校と特別支援学校について、3月2日から春休みに入るまで臨時休校するよう要請しました。また27日のNYダウの終値は25,766.64ドル(前日比1,190.95ドル安)と史上最大の下げ幅で取引を終え、2月12日の終値(29,551.42ドル)から12.8%下落した水準となっています。26日には初めて南米ブラジルでの感染が報告され、米国や欧州でも渡航歴のない方の感染が報告されており、世界的に感染が終息する気配は見えない状況にあります。
先日、プライベートで1年半ぶりに札幌を訪れましたが、新千歳空港や札幌駅、すすきの等の人が集まる場所の様子は前回訪問時とは様相がだいぶ異なっていました。
前回滞在時にはあれほど大勢いた大型のスーツケースを持ち歩いている中国からの観光客の集団を見かけることは全くありませんでした。繁華街のすすきのでも旅行者の姿もまばらで、人手も夜はともかく平日の昼間は閑散としており、観光やインバウンド消費に与える影響は、先月時点の大方の予想より相当悪化しているといえるでしょう。筆者は札幌に行くと狸小路商店街で街角景気をウォッチしているのですが、今回は土産物屋やドラッグストアでの来店客数も1年半前とは比べることができないくらい減少しており、お土産として有名なお菓子も店頭に山積みにされていることに驚きました。
2月17日に発表された10~12月期の実質国内総生産(GDP)は前年比マイナス6.3%と市場予想以上に低下しました。1~3月期もマイナスが続けば、リセッション(=景気後退期)とみなされますが、現状の経済環境下では3月にV字回復する見込は極めて低く2期連続のマイナスとなることは必至でしょう。
21日に発表された百貨店売上高(2020年1月)は前年同月比3.1%減の4,703億円と4ヵ月連続のマイナスとなりました。インバウンドは春節の月ズレ(昨年2月5日→今年1月25日)で二桁増となりましたが、1月下旬からは新型コロナウイルスの影響により国内外の集客・売上ともに厳しい商況となりました。
27日に発表された2020年1月の工作機械受注状況も内需は前年同月比63.3%、外需も65.1%と回復のめどは見えていません。2019年累計の受注額も内需は前年比65.7%、外需は69.1%でしたので、2月と3月の状況を考えると減速のピッチは緩むどころか、むしろ早まっていると考えられます。
先日、都内で乗車したタクシーの運転手さんも乗客が激減していると嘆いていましたが、外出の抑制や会議やイベントの中止により、マスクや消毒剤等ごく一部の商品を除き、モノやサービスの流れ、それに付随するカネの流れが明らかに低下しています。依然として新型コロナウイルス(COVID-19)の特徴や対応策については明らかになっていませんが、1日も早く感染のスピードが収まり、モノやお金の流れが正常な状態に戻ることを期待したいものです。
(堀記)