この動産に注目! ― イカ ―
立春が過ぎてからようやく強めの寒気が日本に接近し、北風が強くなるとともに気温も下がり、多少は冬らしい天気になってきている。しかし、世間を騒がしている新型コロナウイルスはまさに冬季を好むウイルスのようで、温度の低いカラカラとした乾燥の環境ではウイルスもいっそう感染力を増していくではないかと、ちょっと心配である。中国の武漢から始まった新型コロナウイルスの感染は、すでに世界中に拡散しており、これを受けてWHOも「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」を宣言している。中国と他国の人・物の流れも滞てきている中、米中の貿易摩擦ですでに停滞気味になる世界経済の状況もさらに厳しくなることが予想される。
新型コロナウイルスに対抗するため、世界各国の研究機関や製薬会社では研究開発を加速しており、米大手バイオ製薬会社のギリアド・サイエンシズはすでに中国に治験薬を提供し、臨床試験も開始している。技術の進歩で新型コロナウイルスの猛威も意外と早いペースで抑え込まれるかもしれない。とはいうものの、有効性が確認された薬品などが現れてくれないと、世の中の不安はそう簡単になくなるわけがない。筆者にとっても家族のために町中のドラッグストアでほぼ姿を消していたマスクを探し求める日々もしばらく続きそうだ。
一方、今回のテーマであるイカについては、日本の海から消えるスピードも、マスクがドラグストアから姿を消すスピードを劣らないようだ。気候の変動に伴う環境変化などの影響からイカの不漁はここ数年が続いており、2019年の漁獲量は前年比8割も減少している。水産庁は2020年の漁獲枠について過去最低の5万7千トンに設定する方針であるが、この水準は2019年の漁獲量より15%も少なくなっている。不漁が止まらない中、イカの流通価格も上昇しつづけており、東京都中央卸売市場が発表している2019年12月時点の冷イカ類の平均価格は1kgあたり1,268円と前年同月比約26%上昇している。これは年間漁獲量が大幅に減りはじまった2015年の年間平均(680円)と比べてほぼ倍の水準となっている。
イカは生鮮品として売られるほか、様々な加工食品の原料としても利用され、筆者もよくおやつ感覚でイカ加工品を好んで食べている。しかし、今のペースで不漁が続けば、いつしかイカも高級品になってしまうかもしれない。 そのような日が来ないことを祈るしかないものの、人間界に新しいコロナウイルスをばら撒くことを決意した自然の神様に通用するのか、ちょっと疑問が残る。
(孫記)