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2019-11-11 注目動産

この動産に注目! ― 真珠 ―

 台風19号の襲来から早1ヶ月を経ち、この頃の天気はようやく秋らしくなってきた。暦上では立冬も目前に迫っており、日々の通勤で目に入る木々の色も徐々に濃くなってきている。紅葉の季節に近づくと、筆者の家庭では決まって「どこへ遊びに行く」という質問の出現頻度が直線的に上昇し、もはやどこにも行かないと回答する余地はいっさい残っていないのが常である。しかし、最近では筆者が「遊び」に備える計画やら準備やらに勤しんだ結果、「遊び」を楽しむ前にすでに疲れてしまうことも多くなっており、「遊び」の積極性は過去と比べてだいぶ落ちている。家で大声を出して抵抗すると火花を散らす恐れもあることから、結局は大人しくぺこぺこで対応している。

 喧嘩の火花で燃えるのが当事者の音量と顔色だけだが、先月31日に電気系統とみられる出火先から出た火花は、首里城にある多くの重要建物を焼失させた。憧れの旅行先で、いまだに一度も訪れることのできなかった筆者にとっては大変驚きと言わざるを得ない。沖縄旅行は実現こそできなかったものの、過去に一度はプラン作りに挑戦したこともある。首里城はもちろんのこと、首里城から那覇港まで延びる真珠道にもとても興味を持ち、名前からロマンに満ちたこの道路もぜひ通ってみたかったことがいまだに鮮明に覚えている。首里城の再建に向けてすでに様々な動きが出ているが、筆者も新しい首里城に早く出会えることを願いたい。

 真珠といえば、沖縄との関係も深く、沖縄の石垣島において世界で初めて黒蝶真珠の養殖に成功したことが養殖真珠の歴史に残る出来事でもある。ただ、現在の日本では最も普及しているのがアコヤ真珠の養殖であり、輝きなど品質の良さから、海外にも高い人気があり、水産物の中でも大きな輸出規模を誇っている。アコヤ真珠の養殖では、アコヤ貝が利用されているが、今年の夏からアコヤ貝の斃死が急増したことが大きな問題となった。特に稚貝を中心に被害が拡大しており、養殖場によっては7~8割の稚貝が死んだともいわれている。日本国内では製品在庫があり、また真珠生産可能な3年貝の被害が相対的に少ないことからすぐにも真珠市場に影響を与えることはないものの、斃死の原因がまだ不明であり、今後は真珠の品質への影響や生産能力の回復などについて大きな懸念が残る。財務省の「貿易統計」をみると、アコヤ貝の斃死が拡大した8月以降の平均輸出単価(輸出金額÷輸出数量)は1グラムあたり800円を超えており、2018年の年間平均と比べて10%弱上昇している。

 筆者は、そもそも見た目で本物の真珠とイミテーションの真珠の区別がつかないので、購入するなら本物にこだわらなくてもいいと思っているが、女性にとってはありえない理屈で、筆者の家庭内でも当然ながら通用するはずもない。とはいえ、「どこへ遊びに行く」と比べて「どれを買う」の出現頻度はかなり少なくなっているだけでも、感恩戴徳に値するではないかとつくづく思う。

(孫記)

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