この動産に注目! ― 米 ―
消費税増税まで残りあと1ヵ月未満となっており、いよいよテレビなどで駆け込み需要に関する報道が賑わいを見せてもおかしくない時期のはずなのに、意外にもこの頃はかなり「静か」である。総務省が発表した7月の家計調査によれば、2人以上世帯の1世帯あたり消費支出額は前年同月比0.8%増と、8ヵ月連続の増加となったものの、高額消費財を中心に安定的に需要が増え続けている品目が見当たらないという。そもそも景気が堅調というわりに消費の拡大にそれほど寄与していないなのか?それとも、政府による増税の影響を軽減するための対策が奏功しているのか?詮索しても答えは出てきそうもない。
消費税増税による影響を軽減するための対策といえば、増税後の9ヵ月間、キャッシュレス決済を利用した消費者に対してポイント還元やキャッシュバックする還元事業が用意されていることが大いに注目されている。支払いでクレジットカードをよく使う筆者にとっても一大関心事で、どこで還元を受けられるかを調べるため、当該事業の事務局業務を担当している一般社団法人キャッシュレス推進協議会のホームページにもアクセスし、還元策の登録対象店舗を確認した。
驚くことに、対象店舗の表示はなんと数千頁(9月6日時点は6360頁)にもおよぶPDFファイルとなっており、中身をみると、事業者の名前には「販売課」など得体のしれない先も掲載されている。どうしてキャッシュレスというデジタル社会の便利さの象徴が、このような全く検索に向かない面倒くさいものとセットになっているのか、キャッシュレスを推進したい本気度はどうも疑わしい。例のPDFファイルには、地図上に対象店舗を表示するウェブ機能やアプリを9月中下旬に公表予定という注意書きもあるが、こんどこそキャッシュレスという名にふさわしいツールを期待したい。
ところで今回のテーマである米については、軽減税率が適用されるため、一般家庭の消費分に関しては増税から特段影響を受けない。2019年産の米については、全国の作付け面積が前年よりやや減少する見込みであるものの、全体的におおむね作柄は良好で、供給は前年を上回ると予想されている。しかし、米価格の上昇(2018年産米の平均相対取引価格(2019年7月現在)は60kgあたり15,686円と、安値を付けた2014年産米と比べて約31%も上昇)による影響で需要は低迷しており、米よりも主食をパンなどにする消費者が増えている。家計調査をみると、2018年の米に対する消費額(2人以上の世帯)はパンと比べて3割も少ない水準となっている。
国内で生産量が最も多い新潟県では、JA全農にいがたは2019年産米の集荷時に払う仮渡し金(概算金)について、最高級の魚沼産コシヒカリの金額を前年比3%引き下げるなど、概算金の抑制に動いている。今後は、最大産地である新潟県に続き、他の地域でも概算金を抑制するのかが注目される。なお、日本国内における米の流通では、JAグループが約4割のシェアを占めており、JAの動向次第で4年続伸した米の価格の上昇は一巡する可能性もありそうだ。
筆者の家では、パンをよく食べるが、米が主役であることには変わりがない。しかも、消費量が減るどころか、むしろ米びつの減りぐあいが昔よりも速まっている感じすらある。一定期間をわたり、正確に量って比べたわけではないため、ただの勘違いかもしれないが、本当に事実だとしたら、またいろいろと体の心配事も出てくるので、真実はとりあえず闇の中に葬りたい。
(孫記)