この動産に注目! ― チーズ ―
梅雨明けてから暑い日が続き、太陽に照らされる毎朝の通勤は、蒸し風呂の無料サービスを受ける時間帯になっている。会社についてから汗が引くまでの所要時間は長くなり、始業後30分程度の給料には多少申し訳ない気持ちである。国連のグテレス事務総長は8月のはじめに、7月の世界の気温について「観測史上最も暑かった月を上回らなくとも、匹敵はした」と発言したようだが、東京に限って言えば、むしろ今が暑さのピークを迎えており、先の見えない暑さとの戦いはまだまだ続きそうだ。
北半球は夏の暑さに悩まされる中、米中の貿易戦争も気温の上昇に乗じてヒートアップしている。トランプ大統領は中国からの輸入品に対する「第4弾」の制裁関税を発動すると発表した影響を受け、人民元の為替レートは11年ぶりに1ドル=7元台に下げる場面もあった。これに対して、米国はすかさず中国を「為替操作国」に指定しており、改善なければ制裁措置も検討するとしている。米国は、中国に対する圧力を強め、譲歩を引き出そうとしているが、中国は米国の大統領選も見据えて貿易交渉を長期戦に持ち込もうとしている。両国間では、交渉が続いているが、果たしてどのタイミングで歩み寄るのか、今後の展開から目が離せない。
ところで、今回のテーマであるチーズについても、「貿易」というキーワードに密接している。日本で消費されるチーズの約8割が輸入品であるが、日欧の経済連携協定(EPA)や、環太平洋経済連携協定(TPP)の発効に伴う関税の引き下げを受け、輸入量は増加しており、日本国内における消費量も拡大傾向となっている。農林水産省の調査によれば、2018年度のチーズ消費量は前年度比約4%増え、4年連続で過去最高を更新したという。
チーズの主要輸入先は欧州とオセアニアとなっているが、前者から輸入したものは主にナチュラルチーズとして流通しており、後者から輸入したものは主にプロセスチーズの原料として利用されている。輸入先を国別でみると、特にオーストラリア、ニュージーランドの2ヵ国からの輸入量は大きく、輸入全体の半数を占めている。最近では、この2ヵ国において天候不順による牧草の成長が悪化した影響で生乳の生産量が減少しており、チーズ輸出価格も上昇している。TPP発効の恩恵で国内の製品流通価格への影響はまだ限定的であるが、中国などでもチーズ需要が拡大する中、オーストラリアなどのの供給減は国際の流通価格を押し上げることにならないのかが注目される。
チーズにはたんぱく質がもちろん、ビタミンやミネラルも豊富に含まれており、夏バテにはたいへんよい食材とされる。暑さで夏バテ気味の筆者にとって、この際は夏バテを上手に利用して食を減らすべきか?それともおいしいナチュラルチーズをいっぱい食べて夏バテの解消を図るべきか?なかなか悩ましいところである。
(孫記)