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2019-07-01 業界動向

サブスクリプション

 最近、サブスクリプションという言葉を毎日のように耳にします。サブスクリプションとは、もともと予約購読や定期購読という意味ですが、毎月一定額を支払うことにより音楽や動画の配信サービスを定額で無制限に利用できたり、食品の購入や飲食を無制限もしくは特定の有利な条件で受けることができる契約を広くサブスクリプション(サブスク)というようです。

 例えば音楽配信サービスでは、
Amazon Music Unlimited(アマゾンミュージックアンリミテッド)、Apple Music(アップルミュージック)、AWA(アワ)、Google Play Music(グーグルプレイミュージック)、KKBOX(ケーケーボックス)、LINE MUSIC(ラインミュージック)、Spotify(スポティファイ)、Rec Music(レックミュージック)、Rakuten Music(楽天ミュージック)、
YouTube Music(ユーチューブミュージック)等から魅力的なサービスが多数提供されています。
 また動画配信サービスでは、
Amazon Prime Video(アマゾンプライムビデオ)、auビデオパス、dアニメストア、DAZN(ダゾーン)、dTV(ディーティービー)、FODプレミアム(フジテレビオンデマンド)、Hulu(フールー)、Netflix(ネットフリックス)、Paravi(パラビ)、U-NEXT(ユーネクスト)が、様々な広告媒体を通じて宣伝されていますし、実際にサービスを利用されている方も多いのではないでしょうか。

 筆者のような「昭和」の人間からみると、カセットテープやビデオテープに音楽やテレビ番組を録音・録画していた時代から、記録媒体がCDやDVDに代わり、再生機器がカセットデッキがウォークマンに代わったかと思えば、そもそも記録媒体の存在自体が薄れ、音楽や映像を再生する機器がスマートフォンやパソコンのようなデジタル機器にほぼ代替してしまったことに驚いてしまいますが、そうした中で、以前からある「月ぎめサービス」が市場の飽和感、経済成長の鈍化といった構造的な要因とパソコンやスマートフォンをはじめとするデジタル機器とインターネットの普及・拡大という要因を背景に一気に広がったと思えば、納得できる部分もあります。
 筆者も複数のサブスクリプションサービスの恩恵を受け、特に映画やスポーツ放送関連の動画配信サービスを楽しみにしている一人ですが、魅力的なコンテンツを「お気に入り」に多数登録したり、映画のダウンロードはしているものの、それらのコンテンツを楽しむ時間をどうやって捻出するか、が最大の悩みの種になっています。

 サブスクリプションは音楽・動画配信以外にも電子書籍、ニュース、学習といったインターネットやデジタルのような分野に親和性が高い印象がありますが、リアルなモノの分野でも様々なサービスが提供され始めているようです。具体的には食品分野(小売店、飲食店)、自動車、洋服、化粧品といったモノについてサブスクリプションサービスが展開されています。
 飲食の分野では、コーヒーショップ(カフェ)等で定額制でコーヒー等のドリンク飲み放題のサービスが受けられるとか、ラーメン店でも定額制でラーメンが食べ放題になる等、特定顧客の囲い込みの側面が強いように見受けられます。そういえば私の好きなうどんチェーン店に以前からあった天ぷらが全品100円割引になる天ぷら定期券もサブスクリプションの一種なのだろう、とあらためて思い出しました。一方、居酒屋が提供する飲み放題サブスクリプションは、特定顧客の囲い込み(来店頻度のアップ)だけでなく他の来店客の誘引を通じた売上増加を期待しているなど、各社の戦略・狙いは様々なようです。
 自動車分野でのサブスクリプションは、レンタカーやカーシェアとは異なる顧客ニーズ(継続的に自動車を保有したいが、保有に伴う各種負担を軽減したい等)に対応する形で生まれたようですし、洋服のサブスクリプションについても、定額でコーディネートをしてくれる、選ぶ手間を省き、購入することなく新しい服を着ることができ、飽きたら返品できるといった点に魅力を感じるユーザーの関心を集めているようです。
 化粧品やひげそり用カミソリの替え刃のサブスクリプションについても、継続的に購入している「定番商品」を定期的に配送してもらえることで購入に要する時間や手間が省ける点でユーザーにメリットがあるといえるでしょう。

 個人消費の大幅な伸びが期待できない中、メーカーや流通事業者にとっては顧客の囲い込みによる収益の確保ができ、利用者側も定額かつ通常より安価でモノが購入できるという点でデメリットはほとんど見当たらないようですが、筆者が飲食分野で特に関心を持っているのは、「食べ放題」型のサブスクリプションではなく、これまで廃棄していた売れ残りや賞味期限間際の食品等、いわゆる「訳あり食品」のサブスクリプションサービスです。コンビニエンスストアでも従来のルールでは廃棄していた食品を賞味期限切れ間際に値引販売するという取組が始まっていますが、これまでの大量生産、大量消費、大量廃棄とは一線を画す点で、特に関心を持っていますし、今後もこうした動きが広がっていくことを期待しています。

 6月28日から大阪でG20サミットが開催されています。世界経済、貿易、投資、開発、気候、エネルギー、デジタル、雇用、テロ対策、移民難民等、テーマは盛りだくさんですが、世界中が注目しているのはトランプ大統領と習近平国家主席による米中首脳会談の行方でしょう。会談は29日に予定されており、7月1日には全容が明らかになるでしょう。米中貿易戦争が終息に向かうのか、一旦休戦に入るのか、それとも燻り続けるのか。サブスクリプションを含むすべての消費行動、物流(モノの流れ)に影響を与える2大大国の首脳が果たしてどんな議論を行うのか、注目したいと思います。

(堀記)

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