この動産に注目! ― 金・白金 ―
年の折り返しを過ぎ、年末までの時間が残り半分となったところで、年末に向けて時の流れもなんとなく速くなってきている感じがする。節季上は「小暑」が過ぎており、暦的にはもう夏になっている。幸いに梅雨の曇り空に太陽が覆い隠されたおかげでこの頃はまだそれほど暑さを感じない。しかし、沖縄ではすでに梅雨明けしており、あと1~2週もすれば、関東でも梅雨明けして本格的な夏日を迎えることとなり、真夏の太陽とかくれんぼしながら通勤する日々はいよいよ到来する。
今年の梅雨明けは、平年並みであれば、7月21日ごろになると予想されており、ちょうど参院選の投票日と重なるかもしれない。消費税増税や憲法改正、老後不安問題などの争点として挙げられる中、梅雨明けとともに暑い・熱い選挙になる可能性もある。特に老後不安問題については、金融庁の審議会がまとめた報告書を受けて急浮上しており、老後の収入から支出を差し引き、夫婦2人の世帯で30年の期間なら平均2,000万円不足するという試算は多くの人にショックを与えたようだ。すでに少額投資非課税制度(NISA)の申し込みが急増していることや、資産運用を扱うセミナーには募集を大幅に上回る参加希望者が集まっていることなども報道され、ちょっとした騒ぎが巻き起こっている。
ところで、資産運用といえば、今回のテーマである金・プラチナ(白金)も大いに関連している。代表的な貴金属である金とプラチナは宝飾品の素材や工業製品の原料として使われているほか、投資の対象としても取引量が多くなっている。特にプラチナについては、産出量が金よりも少ないことから、その価格はかつて金を上回って推移していた。しかし、2015年ごろには、フォルクスワーゲンの排ガス不正問題で工業用途向けのプラチナ需要が減少すると予想され、価格は金と完全に逆転した。その後も反転することはなく、金を下回る水準で取引されている。
足元では米中の貿易戦争などの影響から安全資産として金には資金が流入する一方、工業用途の多いプラチナは実需の減少から、価格が低迷している。こうした影響から、金とプラチナの価格差は拡大しており、6月時点の金の
価格(田中貴金属公表相場)は1オンスあたり約1,359ドル、プラチナは同808ドルと、両者の差額は550ドル以上に広がっており、過去最大水準となっている。米中両国による貿易交渉が再開されているものの、交渉結果に関する先行き不透明感が強いうえ、イラン問題など地政学リスクも高まっていることから、両者の価格差はさらに拡大する可能性もある。
老後不安問題について、筆者も自分の老後にはいくらの資金が必要なのか、大変興味がある。仮に退職までたどり着けてもそれから30年も生きる自信はないので、必要となる資金もさすがに2,000万円には届かないではないかと
たかをくくっている。とはいうものの、30年の半分を生きても平均1,000万円は必要という計算であり、今から投資を増やしても、果たして銀行口座の残高が7桁を超える日はくるのか、豊かな想像力を持ち合わせていない筆者にと
って大いなる疑問である。
(孫記)