この動産に注目! ― ゴマ ―
梅雨前線が徐々に北上する中、東京では雨の日が増えてきており、近日中に梅雨入りの可能性もかなり高まっている。気温の上昇とともに湿度も上がり、これからじめじめした日々が続くと思うと、気も重くなってしまう。梅雨に向けてぐずつきはじまる天気と同じ、この頃の世界経済もだいぶ曇ってきており、国際通貨基金(IMF)の試算によれば、米中の貿易戦争が激化すると、2020年の世界全体の成長率を0.5ポイント下押しするという。6月末には大阪市にてG20(20カ国・地域)首脳会議が開催される予定となっているが、米トランプ大統領がG20の後に中国に対して3000億ドル分の追加関税を発動するかどうかを決定するとの考えも明らかにしており、米中間の貿易戦争が激化に向かって突き進む可能性もかなり高くなっているようだ。
これまでの貿易戦で米国の激しい攻勢を受けて中国はどちらかというと防御側に回っているように見えるが、最近になってレアアースカードを持ち出す可能性をちらつかせ、ちょっとした攻勢に出る可能性も出ている。2010年、2011年ごろには、領土問題で日中関係が悪化した時にも、レアアースの対日輸出を制限することがあったが、その結果、日本企業による使用量の削減やリサイクルなどに関する技術の開発につながるきっかけにもなった。レアアースの供給者としてすでに傷ついた中国が米国との交渉でまたレアアースを交渉カードとして使った時には、果たして米国にどれだけの打撃を与え、そして期待ほどの譲歩を引き出せるのか、注目される。
ところで、今回のテーマであるゴマについては、米中の貿易戦争とはあまり関係がないものの、やはり中国などの影響で相場が大きく動いている。日本国内で使用するゴマ原料はほぼ100%輸入品に頼っているが、輸入規模は中国に次ぐ世界2位の水準であり、主な輸入先はナイジェリアやブルキナファソ、タンザニア、モザンビークなど、アフリカ各国が上位に並んでいる。今年については、タンザニアやモザンビークなどではサイクロンの影響で不作の懸念が強まっている。また、中国やインドが国内需要の増加に伴って国際市場での買い付けを強化しており、ナイジェリアやブルキナファソでも在庫が減り、産地価格が押し上げられている。財務省の貿易統計をみると、2019年4月時点の平均輸入単価は1kgあたり約176円と、前年同月比約32%上昇している。国内搾油各社は原料価格の上昇を受け、製品の値上げを実施しているが、産地価格が高止まる中、一段と値上げする可能性もある。
ゴマは風味や味、香りのよさから、中国やインドなどのみならず、欧米でも認知が広がり、世界的に消費量が増えている。一方で、ゴマの収穫では機械化しにくく、労働集約型の作物として単収や作業性が悪いとされる。このため、世界全体の生産量は大豆や菜種など他の搾油種子と比べて限られており、その価格も需給動向や産地の天候などに敏感に反応するする傾向がある。筆者の家では、ゴマ油の出番が多く、サラダ油に及ばないものの、決して使用量が少なくない。市販価格がさらに上がる可能性もある中、特売のチャンスを逃さまいと、スーパーのチラシなど集めて情報収集力を高める必要もありそうだ。
(孫記)