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2019-04-19 Fintech

引退

先月のコラムを書き上げたその夜、3月21日にイチロー選手がついに「引退」を表明しました。生まれ育った日本での開幕戦。恐らくこの日が現役生活のラストゲームになるであろうことは薄々予想はしていたものの、そのシーンを目の当たりにしてみると、やはりショックであり、底知れぬ寂しさを感じました。

その後に行われた深夜の引退会見。イチローは何を語るのか?という興味と、翌朝の仕事のために早く寝なくては・・・という気持ちが葛藤する中、結局は最後まで見てしまった訳ですが、ユーモアも含みながらも金言に溢れた、それは睡眠よりもはるかに価値ある素晴らしい会見でした。中でも、現役生活に対し「後悔などあろうはずがない。もっとできたことはあると思うが、自分なりに頑張ってきたとははっきりと言える。これを積重ねることでしか、後悔を生まないとういことはありえない」「一気に高みに行こうとすると続けられない。地道に進むしかない。後退もしながら、あるときは後退しかしない時期もあるが、自分がやると決めたことを信じてやっていく」。最近、頑張ることから少し距離を置いている自分には、深く胸に刺さり、考えさせられる言葉となりました。

同じく「引退」を発表したものに、現行紙幣があります。今月9日、現行デザインの紙幣は2024年度上期をめどに引退。代わりに新デザインの紙幣を発行することが発表されました。現行紙幣は、2004年に登場しましたので、約20年の現役生活にピリオドを打ち、福沢諭吉から渋沢栄一などへと世代交代が図られることになります。

一方で、世はキャッシュレス化の時代。今秋の増税時には、電子マネー、クレジットカード、スマホ決済など、現金以外のキャッシュレス決済で商品を購入した場合に限り、ポイント還元の特典が受けられるなど、政府も含めて、あの手この手で世の中から現金を無くそうという動き。そんな中で、今さら新紙幣を発行するの?と、やや逆行錯誤の向きも否めません。

「新紙幣によって偽造リスクが下がると、ますますキャッシュレス決済を利用するインセンティブが下がる」「せめて1万円札を無くせば、財布が膨らむのを嫌がり、キャッシュレスに移行する人が増える」「新紙幣の発行にかかる費用をキャッシュレス推進にあてたほうがよい」。いろいろな意見が出ていますが、見方を変えれば、新紙幣はキャッシュレス化を加速するとも言えるのではないででしょうか。というのも、新紙幣が発行されると、当然にして世の中のPOSレジや自販機、券売機等は新札対応機にリプレイスされます。その際には、多くの機械に電子マネーやQRコード決済機能が付加されることになるでしょうから、キャッシュレスのインフラ整備が一機に加速するという見方も。今回の取組、果たしてキャッシュレス化のためなのか?キャッシュを振興したいのか?

さて私の中では、一万円札の表面に描かれる人物と言えば聖徳太子。調べてみると、聖徳太子の一万円札の発行が停止したのは1984年で、実に35年も前のことだそうです。あの神々しい一万円札ってそんなに昔なのか・・・と周りに同意を求めてみると、物心ついた時から一万円札は福澤諭吉です!聖徳太子の一万円札など見たことがありません!という人間が多数。また、マリナーズのイチローは知っているが、オリックスのイチローは知らないという人間もチラホラ。そんなイチローも引退となると、我が歳を感じずにはいられないこの頃です。

(田中記)

 

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