この動産に注目! ― 鉄スクラップ ―
3月に入ってから気温は少しずつ上がってきており、外出する時に着ているコートで暑く感じることも多くなってきている。気温の上昇に伴って花粉はまた猛威を振るい始めているが、今のところ花粉症と無縁である筆者にとって怯えながら過ごす日々もまた始まっている。果たして今年は花粉症にならずに持ちこたえられるのか、花粉のピークが過ぎる4月末までは気が抜けられない。ところで、花粉が収まる5月には、新天皇の即位が控えており、新元号もいよいよ発表される。1つの元号で1つの世代に例えられるなら、筆者はとうとう2世代前に生まれた人間になってしまう。時の流れにおののきを覚える筆者からすると、今は「10連休」という楽しい響きを持つ言葉の存在がせめての救いとなる。
新しい元号の始まりにあたり、景気も含めてイケイケムードで盛りあってほしいが、残念ながらすべての物事が都合の良い方向へ運べるとは限らないのが世の常である。内閣府が7日発表した1月の景気動向指数によれば、景気
の現状を示す一致指数が97.9となり、前月比2.7ポイント低下した。指数の悪化は3ヵ月連続であり、中国の景気減速に伴って日本の景気も後退局面に入った可能性があるとみられる。これを受け、内閣府は景気に対する基調判断を「下方への局面変化を示している」に下方修正したが、今後もこの傾向が続くか、注目される。
中国の景気悪化は日本の景気を押し下げる要因となっているが、今回のテーマである鉄スクラップについては、逆に中国の影響で国内価格が上がっている。日刊産業新聞が公表している鉄スクラップ(H2、東京地区、問屋ヤー
ド持ち込み価格、高安の中値)の価格は2月現在、1トンあたり2万1,750円と、前月比5%上昇した。鉄スクラップ価格は昨年の秋以降、下落の動きが続いたが、今年になってから上昇に転じている。中国では景気悪化への対策を拡充
し、中国国内の鉄鋼メーカーによる鉄スクラップ原料への需要も堅調であることがアジア相場を押し上げ、日本国内の価格も連れ高となったことが大きな要因とされる。また、鉄鉱石の輸出国であるブラジルでは、1月末に発生した鉱山ダムの決壊で鉄鉱石の輸出減が見込まれ、国際価格が上昇したため、中国などでは代替として鉄スクラップの調達を強化したことも影響したといわれている。足元では、4~5月の10連休に備え、国内の電炉鉄鋼メーカーを中心に原料の手当てを強化する動きが広がっており、鉄スクラップの国内価格の上昇はしばらく続く可能性もありそうだ。
最近では、米中貿易戦争の長期化による世界経済への影響が広がり、日本もそうした影響に巻き込まれている。内閣府は昨年の12月に、2012年12月に始まった景気の拡大が、「いざなぎ景気」(1965年11月~1970年7月)を上回り、戦後2番目の長さになったと発表したばかりだが、まだ景気の長期成長による恩恵をほとんど体感できていないのに、もう景気減速に直面しなければいけないのかと、どうも腑に落ちないのが筆者だけだろうか。
(孫記)