この動産に注目! ― コーヒー豆 ―
「立春」という季節の変わり目を過ぎてから、日々の気温は急に暖かくなったり、寒くなったりしており、寒暖の差は大きくなっている。筆者の体は気温の変化に追いつかず、風邪をひいてしまい、今はまさに喉の痛みに苦し んでいる。ただ、インフルエンザがまだ大流行している中、ちょっとした風邪で済むなら不幸中の幸いとも言える。とはいえ、厚生労働省の統計によると、今回のインフルエンザの流行シーズンでは、患者数は過去最多を記録し たという。インフルエンザの流行は通常、3月になってからピークを過ぎるといわれており、今で安心するもの少し早いかもしれない。
ところで、厚生労働省の統計について、この頃は統計手法の不正がちょっとした話題を呼んでいる。問題となった「毎月勤労統計調査」については、過去十数年間で不正が行われたが、厚生労働省によるデータの修正は2018年 分にとどまっている。2018年調査の結果、実質賃金が前年比で2年ぶりの増加になっているものの、本当は前年比でマイナスになっているではないかと疑問視する声も国会で挙がっている。しかし、厚生労働省は過去の統計分に ついてさかのぼって検証することが困難としており、プラス・マイナスに関する論争の結果も結局は平行線のままで消えてしまいそうだ。
実質賃金の増減に関する真実はさておき、消費者の節約志向が相変わらず根強いという点についてあまり異論はないようだ。今回のテーマでコーヒー豆についても、消費者の節約志向が反映されている品となっている。日本国 内で流通するコーヒー豆はブラジルなどで生産されるアラビカ種とベトナムなどで生産されるロブスタ種に大別される。国際市場ではアラビカ種と比べてロブスタ種の価格が約3割安い水準で取引されているが、日本国内では近年、 ロブスタ種のコーヒー豆に対する需要は増加している。財務省の貿易統計をみると、ロブスタ種の主な生産国であるベトナムからの輸入量は2018年時点で約9万8,000トンと、前年比1割以上増加した。これは、コーヒー輸入全体 の約24%を占めており、1位のブラジルの約26%に次ぐ水準となっている。日本国内のコーヒー市場は拡大基調が続き、主に手軽に飲めるインスタントコーヒーに使用されるロブスタ種の需要増にもつながっている。
一方、割安なロブスタ種と対照的に高級コーヒーの代表格であるジャマイカ産の「ブルマウンテン」(アラビカ種)の需要は近年減少傾向となっている。日本は「ブルマウンテン」の最大輸入国であるが、2018年にジャマイカ からの輸入量は約357トンと、輸入量が1,000トンを超えた2008年当時から約65%減少している。減少の背景には、高級コーヒー豆の選択肢が増えたほか、コンビニの百円コーヒーに代表される低価格コーヒーの広がり大きく影響し たとされており、その需要は今後も大幅に回復することはないと思われる。
コーヒーの需要拡大について低価格品の普及だけでなく、健康に良いと言われる点も要因の1つとされる。具体的な効用はいろいろとあるようだが、その中でも抗菌作用を持っていることは、喉が痛む筆者にとって、このタイ ミングで一番ありがたい効用と言えるかもしれない。痛い……
(孫記)