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2018-11-09 注目動産

この動産に注目! ― 鉄骨鋼材 ―

 あと数日で11月も中盤になり、新聞などではおせち料理の広告が現れるなど、年の終わりを意識させる物事が多くなってきている。年末という書き入れ時に合わせ、ネット通販大手各社がタイムセール祭りをやったり、中国発
の「独身の日」にあやかって「いい買物の日」や「おひとりさまDAY」などの買い物イベントを企画したりして、世の中も年末の賑わいを見せ始めている。日本の景気が緩やかに回復しつづけているとよく言われているものの、内
需よりも外需がけん引役となっていることから、多くの人々がなかなか懐の潤いを実感できない状況は一向に変わらないようだ。果たして結婚の身をもってわがままに年末のひとりさまイベントなどを楽しむことが許されるのか、
筆者は背後の視線を感じつつ、おとなしくするという選択肢しかないことを観念している。

 年末の賑わいといえば、米国で行われた中間選挙は大きな賑わいを見せ、投票率も過去50年で最高と見られている。大統領選挙の時から話題の絶えないトランプ大統領にとって、今回の中間選挙は、就任以来の政策や政治手法
の是非が問われる信任投票の意味合いも強いことから、米国国内だけでなく、日本を含む世界中からの注目度が高い。結果としては米下院で民主党が8年ぶりに多数派になり、上下両院でねじれが生じたことでトランプ大統領にと
って政権運営が難しくなりそうだ。しかし、これを受け、トランプ大統領による対外の通商政策がさらに強硬になるとの見方もあり、すでに米国と貿易戦争に突入した中国はもちろん、米国と貿易交渉を行う予定の日本にも再び
飛び火する可能性が否めない。

 米国は今年の3月に中国を念頭に鉄鋼やアルミニウム製品の輸入制限を発動したが、日本も制限の対象国に加えられ、すでにとばっちりを食らっている。当初は米国による輸入の減少で、国際市場における鋼材の供給がだぶつき、
鋼材価格が押し下げられるとの懸念もあったが、幸いなことに各国の好景気で鋼材の需給バランスが崩れなかった。日本国内でもオリンピック関連需要や大型再開発、災害復興の関連需要が鋼材価格を支える要因となっており、
米国による輸入制限の影響はほとんど見られなかったようだ。今回のテーマである鉄骨鋼材に関しては、価格はむしろ上昇傾向で推移している。H形鋼に代表される鉄骨鋼材については、ビルや工場などの鉄骨に使われ、好調な
国内需要による寄与で価格が堅調に推移している。日刊産業新聞がまとめたH形鋼(200×100mm、東京地区、高・安値の中間値)の価格は10月現在1トンあたり8万6,500円となっており、前年同月比約14%上昇している。足元では鉄骨鋼材の在庫水準も低位で推移しており、堅調な価格は当面続くとの見方が少なくない。

 ところで、日本の貿易交渉については、今年の12月30日に米国を除く環太平洋連携協定(TPP)はようやく発効する。これに伴って現在の参加国11ヵ国のうち、すでに国内承認の手続きを完了した6ヵ国の間では幅広い工業品や
農産品の関税が引き下げられ、日本の消費者も大きな恩恵を受けられそうだ。とはいうものの、関税率9%のオーストラリア産牛肉を食べられるのがTPP発効後の16年目になると考えると、ちょっと気が遠くなるような思いがしなく
もない。

(孫記)

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