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2018-10-15 注目動産

この動産に注目! ― 原綿 ―

 ここ最近になると、日々の天気はだいぶ秋らしくなってきており、9月末の繁忙期からひとまず解放された筆者も多少ながら、色づき始まる樹々の葉を見上げる余裕を取り戻している。あと1週間程度経ったところで、「霜降」という節季になるが、その言葉のとおり、天気もいよいよ霜が降りるほどに寒くなる。気温が下がるにつれて、季節の風物詩となる紅葉も本格的にきれいになる時期となるが、すでに「早く紅葉見の計画を立てて」と何度も妻に促された筆者にとっては、同時で楽しみと面倒くささの両方に直面しなければいけないことは、今現在のちょっとした悩みになっている。

 ところで、秋の風物詩といえば、スーパーなどの店頭に並ぶ秋の味覚も当然ながら外せない。今年はありがたいことにサンマが豊漁になり、スーパーの特売で1尾100円を下回る時もあるから、なかなか嬉しい。また、サンマと同様、秋を代表する味覚であるマツタケも今年は国産品が豊作のようで、東京都中央卸売市場が公表している卸売価格をみると、8月時点は前年同月比1割以上下がっている。夏の高温と適度な雨が豊作の要因であると言われているが、われわれ人間にとって過ごしにくい環境もマツタケにとって好都合のようだ。

 一方、相場が下がるという点では、今回のテーマである綿花(原綿)は上記の秋の味覚と共通している。原綿の国際相場の指標となるニューヨーク市場の先物価格はこのごろ、下落傾向となっており、直近限月(12月)のもので10月現在の価格は1ポンドあたり78米セントと、6月につけた年初来高値(同約96米セント)から2割近く下がっている。原綿の生産では、インド、中国、米国が上位3ヵ国となっているが、原綿の消費では中国が最も多くなっている。そのため、中国では自国の需要に充てるのに自国産原綿のほか、米国などから外国産の原綿を多く輸入している。しかし、米中貿易戦争において米国産原綿が中国による報復関税の対象品目になっていることから、米国産原綿の輸出減少に対する懸念が高まり、ニューヨークの先物相場を押し下げる要因となっている。

 約1年前には、原綿の国際価格は米国の生産増による供給過剰感から1ポンドあたり70米セント台まで下落したが、今年に入ってから米国の主要産地における天候不順の影響で不作の懸念が高まり、価格も高値圏まで押し戻された。しかし、ここにきて国際価格は再び70米セント台まで下がり、約1年前のスタート時点まで戻った形になっている。日本では、原綿の需要は多くないものの、そのほとんどが輸入品に頼っているだけに、今後は国際相場の動向から目が離せなさそうだ。

 相場が下がると言えば、10月10日の米国株の大幅安を受けて日本株をはじめ、世界各国の株式市場も一斉に下落する展開となった。米国の経済が好調に推移しているものの、米国の長期金利が上昇し続けているほか、米中両国の間で繰り広げられている貿易戦争による世界経済への悪影響が警戒されていることが今回の株安のきっかけとされる。貿易摩擦については日本と米国もこの頃、2国間の貿易交渉を開始すると発表している。政府の公表によれば、交渉の内容は「物品貿易協定」(Trade Agreement on goods=TAG)である。しかし、そもそも交渉の実態は自由貿易協定(Free Trade Agreement=FTA)そのものとの指摘もあり、米国からどれだけの譲歩を迫られるのか、その結果と株式口座の残高の関連性を考えると、筆者は急に秋の空気を冷たく感じるようになった。

(孫記)

 

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