この動産に注目! ― 伸銅品 ―
暦が8月から9月に変わり、猛暑から逃げ惑う日々もようやく一巡した。季節的には、秋の気配が徐々に強まる時期になるものの、依然として30度以上の真夏日は続いており、筆者の家ではエアコンの稼働率も過去最高を更新しつづけている。9月になると、台風21号が日本に上陸し、各地で史上第1位の風速を記録しながら深い爪痕を残したほか、北海道でも震度7の地震が発生し、大規模の停電を引き起こしてインフラに大きな打撃を与える事態となった。
台風や地震によるさまざまな被害があった中、収穫の時期を迎える果物にも影響を与えたことが伝えられている。8月には集中豪雨や猛暑などの影響でミカンやリンゴなどの樹木には傷みや病気が発生し、果実の品質低下や生産量の減少などがすでに懸念されていた。今回の台風21号の上陸でさらに追い打ちをかけ、収穫前の果実が落ちるといった被害も広がったようだ。ミカンやリンゴなどは、これから楽しむ秋の味覚であるだけに、いったい被害がどれほど深刻なのか、今後は東京も含めて消費地相場の動向が心配される。
一方、今回のテーマである伸銅品に関しては、上記秋の味覚と違って値下がりの観測が強まっている。電子部品や自動車部品などに使われる伸銅品をはじめとする銅関連製品の価格は、原料となる銅地金の国際価格の急落を受けて下げ始まっており、伸銅品については、鉄鋼新聞がまとめている代表的な品目である黄銅丸棒(25mm、東京地区)の8月時点の価格は1キロあたり685円と、年初(1月、同770円)から約1割下がっている。銅地金の価格は、世界最大の銅消費国である中国の景気減速懸念が強まったことで軟調に推移し、国際相場の指標となるロンドン金属取引所の先物価格は8月中旬に13ヵ月ぶりに1トンあたり6,000ドルを割り込む場面もあった。米中貿易戦が続く中、中国経済に対する不安感が根強く、銅地金価格の軟調な動きが続けば、伸銅品などの銅関連製品への影響も拡大しそうだ。
ところで、9月の第1日は防災の日になっているようだが、このごろ相次いで発生する災害は筆者にとっても家庭内の防災体制を見直すよいきっかけになる。しかしながら、防災用の備蓄品などを買ってきても、収納の中に押し込めるスペースを確保しなければいけないことは、筆者にとってまたちょっとした「災難」になるかもしれない……
(孫記)