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2018-08-20 Fintech

サマータイム

今年の夏は、前例のないほどの猛暑が全国的に続きました。今夏における気温40℃以上の地点数は、のべ14地点。先月23日には埼玉県の熊谷市で41.1℃の日本最高を記録するなど、記録づくめの夏。流石に8月も後半に差し掛かると、その暑さも少し陰りを見せ始めましたが、とはいえ気温30℃を超える真夏日や35℃を超える猛暑日はまだまだ存在します。皆様におかれましても、どうか水分や塩分補給などの熱中症対策を施し、終盤に差し掛かった記録づくめの夏を事故なく過ごして頂きたいものです。

夏の暑さといえば、2年後の夏に開催される東京オリンピックの暑さ対策として、全国一律で時間を早めるサマータイムの導入検討を政府・与党で始めるとされています。オリンピックが開催される2020年7月24日~8月9日は、ちょうど暑さがピークとなる時期に重なり、マラソンなどの競技の実施に懸念が出ていることから、時計の針を進めることで涼しい時間に実施できることを狙うそうです。

サマータイムについて少し調べてみると、ドイツやカナダ、ニュージーランドなど約70カ国で導入されている実績ある仕組みであり、導入国では時計の針を進めて太陽の出ている時間帯を有効に利用することで、省エネ効果や、余暇の有効活用といったメリットを得ているようです。

ところが、この制度をITの世界からみると、こんなにやっかいな仕組みはありません。制度導入には、コンピュータシステムの大規模改修が必要になり、加えて日本中のあらゆるコンピュータのシステム時刻を間違いなく変更し、正しく動かし続けることは至難の業と思われます。我が国でも、西暦2000年を迎えた際、俗にいう「2000年問題」に直面しました。その際は多くのシステムエンジニアがコンピュータの前に泊まり込み、固唾をのんで日付変更を見守った、あの苦い記憶と重なります。

Fintechを司る金融システムにとっても、例えばサマータイムの初日は1日が24時間よりも短くなることから、金利の計算方法などへの影響を考える必要がでてきます。反対に最終日は1日が24時間より長くなるわけですから、各所で取引時間が長くなり、1日当たりのデータ量への影響も心配しなければなりません。こう言ったひとつひとつの課題をすべて潰し込み、今や世界中とつながる金融システムを確実に連携させる作業は想像を絶します。これに関わる関係者にとってみれば「働き方改革」も何もあったものではありません。

私の中の、サマータイムと言えば、昭和歌謡史に残る名曲「Mr.サマータイム」。男女4人のコーラスグループ「サーカス」が1978年に歌ったヒット曲です。この歌は「ミスターサマータイム~ あの夏の日~ つぐなえる何かが欲しい~♪ 」という歌われており、夏の日の恋の過ちを後悔した女性の「懺悔」の歌です。今回検討するサマータイム。政府与党にとっての「懺悔」の代名詞にならないように願うばかりです。

(田中記)

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