お知らせ&コラム

2018-07-20 Fintech

電子決済等代行業

列島中が猛暑に包まれる中、6月に開幕した2018 FIFA ワールドカップ ロシアが幕を閉じました。約1ヵ月に渡る世界レベルのプレーに私も毎夜夢中になり、これでようやく寝不足から解放されるという安堵感と、大きな楽しみを失った喪失感との間で複雑な気持ちです。

今大会も様々なドラマが誕生しましたが、中でも、初めて導入された「ビデオ・アシスタント・レフェリー(VAR)」に注目が集まりました。VARは、ビデオで主審をサポートし、誤審を防ぐことを目的に導入されたものですが、時にそのサポートが試合結果を大きく左右することになりました。今大会の頂点を決める決勝戦の大舞台でも、VARが登場。初優勝を目指したクロアチアは、コーナーキック後の微妙なコンタクトをVARによってPKと判定されてリードを許してしまうと、その後追いつくことが出来ず、フランスが優勝するという結果となりました。VARの導入によって誤審は減ったものの、その一方で、これまで裁かれなかったコンタクトに対する判定が厳しくなり、試合を決定づけるPKを生むという結果に、不満の声も多く上がったようです。

新たな制度といえば、ワールドカップが開幕する直前の6月1日から、「電子決済等代行業」に関する新しい制度が開始され、国内で電子決済等代行業を営むには、銀行法等に基づく登録が必要となりました(https://www.fsa.go.jp/common/shinsei/dendai/index.html)。本制度は、主にFinTechベンチャーが中心とされる、顧客と銀行の間に立ち、顧客に代わって銀行にアクセスし、送金・支払いの指示や口座情報の取得を行うサービスを提供する事業者が対象とされ、これらに規制を図るものです。登録事業者は、必要な体制整備や銀行との契約締結といった実務対応と、様々な行為規制に服さなければなりません。

一方の銀行も、オープンAPIを提供するための体制整備の努力義務が課せられ、さらには電子決済等代行業者との契約締結に当たって電子決済等代行業者に求める事項の基準を作成し、インターネット等により公表しなければならないとされています。このため、今では、どの銀行のホームページを見ても「電子決済等代行業者との連携及び協働に係る方針」といったタイトルでその内容が公表されていますので、一度ご覧になられると良いかもしれません。

本制度は、これまで銀行側が抱えてきたFinTech企業に対する不安を払拭し、相互の安全なデータ連携を実現することで、さらなるオープンイノベーションの進展を目指すものであり、特に銀行側の期待値が高い新制度です。ワールドカップでのVARしかり、毎度、新たな制度が導入された場合には、不平不満や想定しない副作用が生まれるものですが、果たして本制度はどうでしょう?

電子送金や口座管理といったFintechサービスの展開が加速するのか?金融機関とFintech企業のwin-winの関係は成り立つのか?サッカーにおけるVAR導入では、PKの数がワールドカップ史上過去最多となり、「VARがなければ16強の顔ぶれは違った」とまで言われていますが・・・しばらく今後の展開見守る必要がありそうです。

(田中記)

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