この動産に注目! ― 石炭 ―
今年の関東地方の梅雨はわずか1ヵ月足らず、月を跨ぐこともなく、6月末をもって梅雨明けが発表された。梅雨入りから梅雨明けまでわずか23日しか経っておらず、これは1978年に並ぶ観測史上最短という。関東地方は早く梅雨から抜け出した一方、西日本を中心に梅雨前線に伴う記録的な豪雨の影響で各地において大きな被害を出している。足元は、梅雨明けに伴って降り続けてきた豪雨が止んでいるものの、すでに沖縄方面に向かって台風8号が徐々に近づいてきており、その影響については不安要因として懸念されそうだ。
不安要因といえば、7月6日には米国が中国による知的財産の侵害に対する報復措置として、340億ドル規模の中国輸入品に対して25%の関税を上乗せする制裁を発動した。これに対抗し、中国も同規模の米国製品に追加関税を課すこととなり、両国は本格的な貿易戦争に突入している。サプライチェーンのグローバル化を背景に日本にとって貿易相手国の1、2位である中国と米国の貿易合戦が過熱すれば、日本企業への影響も避けられない。トランプ大統領は、中国に対する制裁の規模は最終的に5000億ドルに拡大する可能性も示唆しているが、本当に両国の貿易戦がそこまで激化するのか、世界中から注目されている。
ところで、今回のテーマである石炭についても、米中の貿易戦で中国側がリストアップしている品目となっており、貿易戦の行方によって国際相場の変動要因になる可能性もある。足元では、中国やインドによる需要増の影響でアジア市場を中心に発電燃料となる一般炭の価格は上昇基調となっており、一般社団法人エネルギー情報センターのまとめによれば、オーストラリア産の価格は5月時点で1トンあたり105.45ドルと、前月比約11%上昇している。中国では、大気汚染を抑制するため、発電用燃料を石炭から液化天然ガス(LNG)への転換を進めているものの、LNGの供給が不足する中、石炭を頼らざるを得ない状況が続いている。また、インドでも、石炭の輸入を減らす政策が思うように進んでいないことから、海外からの輸入が増加している。夏場に向けて中国やインドでの石炭需要が一段と強まる可能性も指摘される中、石炭の相場は当面堅調に推移しつづけるとの見方も出ている。
梅雨が明けてから筆者のうちでは、エアコンの稼働時間が一気に増えており、1ヵ月後の電気料金請求書を確認することに対する不安もエアコンの稼働時間と比例して膨らんでいる。電気料金には基本料金などの項目に加え、燃料費調整額も含まれており、燃料(原油、LNG、石炭)の3ヵ月平均価格の変動に応じて調整される仕組みとなっている。石炭価格が上昇すれば、いずれは電気料金にも影響を及ぼすと推測されるが、エアコンの稼働時間も相応に抑制すべきか、心の葛藤との闘いは気温の上昇とともに激しさを増す日々が続きそうだ。
(孫記)