この動産に注目! ― スリミ ―
6月に入ってから約1週間、関東地方でも梅雨入りが発表され、ぐずつく天気と付き合う日々がまた始まっている。梅雨のシーズンはアジサイの開花時期とも重なり、筆者の家の近所でもところどころにおいて色鮮やかなアジサイがみられるようになっている。関東では、鎌倉市の長谷寺や明月院といったアジサイの名所も多く、日帰りできるちょっとした小旅行も続く雨で沈みがちな気分にとって程よい刺激になると思うと、週末の天気はなかなか気になるところである。
刺激といえば、モリカケに関する刺激的なネタはここにきてめっきりなくなり、テレビ報道の主役の座もアメフトの不正プレーといったスポーツや芸能ニュースに譲られ、世の中は再び「平和」を取り戻している。海外でも、米朝の首脳会談が再び決まり、朝鮮半島の平和に向けた期待が強まっている。すでに米朝首脳会談の開催会場となるシンガポールの高級ホテルが注目を集め、それに合わせて北朝鮮の宿泊代は誰が負担することもちょっとした話題になっている。自分の宿代すら払う気がない国から何を引き出せるのか、トランプ大統領のビジネス手腕が問われそうだ。
ところで、今回のテーマであるスリミについては、まさにビジネス手腕が必要とする状況になっている。練り製品の原料となるスリミは、日本国内でも北海道を中心に生産されているものの、生産量自体は減少傾向となっており、輸入品への依頼が強まっている。現在では、スリミ(スケソウダラのもの)の年間輸入規模は約13万トンと、国内需要の約8割を占めている。
輸入スリミの最大調達先は北米となっており、足元は北米産スリミの価格が上昇している。スリミの原料となるスケソウダラの漁期は毎年の春と秋の2シーズンとなるため、日本の輸入業者はシーズンごとに現地生産者と交渉して輸入価格を決めている。直近春シーズンの価格については、前の秋シーズンより約1割弱上昇していることが伝えられている。輸入スリミの価格はスケソウダラの漁獲量によって変動するものの、直近春シーズンの資源量は安定しており、価格を押し上げたのがスリミに対する世界的な需要増加によるものとされる。スリミ人気が世界的に高まる中、世界で最もスリミを消費している日本にとって今後の調達競争はますます厳しくなりそうだ。
筆者は練り物の食感が好きで、よく食べている。今後は輸入原料スリミの価格上昇による影響はどこまで響くか分からないが、せめて練り物の値札を見て躊躇するような事態になる前、水産商社の商社マン達がビジネス手腕を発揮して頑張っていただきたいところである。
(孫記)