オークション
弊社が提供するサービスは在庫(棚卸資産)の評価や金融機関のお取引先企業の事業性評価が中心であるが、在庫(棚卸資産)の換価サポートを行っていることもあり、先日、美術品(絵画・彫刻等)のオークションを視察させていただく機会を得ることができた。
筆者はこれまで、食肉市場でセリ取引の現場を見学させていただいた経験があり、前職では不動産の競売手続(申立と開札の現場に参加)を行ったことがあるが、それぞれの現場とは異なる体験を通じて感じたことを、今回は記してみたい。
オークションは、競り(セリ)、競売(きょうばい、けいばい)等、呼び方はいろいろあるが、インターネットを通じて個人で簡単に参加できるヤフーオークションやモバオク等の普及により、最近では多くの人にとってなじみのある取引形態となっている。小売店やインターネットショッピングでの購入とは異なり、最終的にいくらで入手(落札)できるか事前には決まっておらず、当初予定した金額より安価で入手できることもあれば、高値になることもある点が最大の特徴である。
インターネットオークションでは、「こんなものまで?」というものを含め、ありとあらゆるものが取引されているが、中央卸売市場、地方卸売市場や、オークション市場で取引されているのは、生鮮食品(食肉、魚、野菜)、花き、家畜や競走馬、中古車や中古バイク、美術品等が一般的である。前述した裁判所が行う不動産・動産の競売や国有地の一般競争入札、株式の取引も広義のオークションと言えるだろうし、公共工事等の入札についても、最も安い価格で入札した人(企業)が当該案件を受注できるという意味では競り(オークション)の一種と言えるだろう。
ヤフオク等に入札した経験のある方はお分かりいただけると思うが、落札できるまでのドキドキ感や落札できなかった時の失望感等々、参加(入札)してみないとわからないことは多々ある。私は数百円から数千円の入札でも、落札できるかどうかとドキドキしてしまうが、私のヤフオクの入札額と、今回、視察した美術品の入札予想金額の桁は、当然のことながら、かなりというか全く違っていた。
今回、自らが入札に参加しなくても、緊張感や熱気といった会場の雰囲気は十分感じられたが、それ以上に、出品者や参加者の顔触れ、具体的な取引のやり方(しぐさ)、取引時間(短いものだと15秒程度、長くても数分程度)等々、インターネットや書物には書かれていない当該現場に行かないことには絶対にわからない点を多々確認することができたことが、大変有益であった。
私が前職で手続を行った不動産の競売手続は申立側であったため、関心は落札者ではなく、具体的な落札額(回収額)であったが、今回の美術品や食肉(牛肉)のオークション(競り)で特に感じたのは、落札を希望する参加者の準備と熱意である。
オークション(競り)には、モノによって期間は異なるが事前に出品対象物を確認する時間がある。参加者は、ここで入念な下調べを行うとともに、自分以外の第三者の入札価格を予想したうえで入札に臨む。
今回の美術品の入札でも、食肉のセリでも、実際の入札では当初の想定通りになるとは限らず、その場その場での駆け引きも必要であるため、その対策を含めた戦略を練っているのであろう(当然のことながら、入札者は、すべての出品物に入札するのではなく、事前に入札予定品と戦略を絞り込んでいる)、という雰囲気が周辺にいた参加者の動きや持っている資料等からひしひしと感じられた。
時には金額を一気にせり上げたり、時には細かく刻んだり。
取引を仕切るオークショニア(競売人)と参加者(落札希望者)との間合いというか呼吸のようなものも含め、今回の視察現場で得られたものは多々あるが、事前の準備と戦略立案の重要性を痛感するとともに、自らの仕事にも生かさねば、とつくづく感じた。
(堀記)