この動産に注目! ― ニッケル ―
師走に入ってから、納期や期限などのキーワードの登場頻度が一気に高まり、家では掃除に追い回され、会社では仕事に追いかけられ、とにかくせわしく動き回る日々が続いている。年越しまではあと3週間、仕事などとの格闘で激しさが増すものの、年末に向けたご馳走の準備や様々なセールでほしいものを購入するチャンスも増えており、楽しみは少なくない。
しかしながら、ご馳走といっても、この頃の牛肉価格は国産・輸入ともに高値圏で推移しており、カニにしては供給減少で一段と高騰する展開となっている。さらに、ホタテ不漁やイカ不漁、サケ不漁、サンマ不漁、戻らない戻りガツオなどと、特に水産物を中心に悲しい話題に伴う激しい値動きも見られ、果たして昨年と比べて年越しの予算をいくら増やす必要があるのか、不安も大きい。
ところで、今回のテーマであるニッケルについても、このごろは急激な価格変動を見せている。工業製品の基礎素材としてニッケルはステンレス鋼や合金、触媒、電極など多くの分野で利用されている。ニッケルの主要生産国であるインドネシアでは、2014年にニッケルの未加工鉱石の輸出を禁じたが、今年に入ってから輸出規制を緩和し、これを受けニッケル価格も6月にかけて軟調に推移した。
ただ、最近では中国をはじめ世界各国において電気自動車(EV)の普及に注力する方針を相次いで表明したことから、EV用電池向けのニッケル需要が増加すると予想され、ニッケルの価格も一転して上昇している。 ニッケル価格の国際指標となるロンドン金属取引所(LME)の先物価格は11月時点で1トンあたり1万2,920ドルと、約2年5か月ぶりの高値水準まで上昇している。ニッケルの需要が増加することが見込まれる反面、海外の一部有力鉱山の停止などにより供給が伸び悩むとみられ、今後はEV需要の本格化によるニッケル価格の動きが注目される。
EVは環境にやさしい車としてガソリン車やディーゼル車などの化石燃料車の代替として注目されているが、そもそも発電に用いられるエネルギーは様々であり、それがガソリンを燃やす車よりもEVがクリーンでエコーという結論に達するには、まず電源構成の割合が重要になってくるかもしれない。とはいえ、街の中で走る車はほとんどEVになる日が確実に近づく中、日増しにペーパードライバーの称号に相応しくなっていく筆者にとっては、車が使う燃料ーよりも車に搭載される自動運転技術の進歩がより身近なテーマとなりそうだ。
(孫記)