景気回復の兆し?
本コラムが出るのは11月30日で明日からは12月。
師走に入り、何かと気ぜわしくなる時期であるが、2017年の振り返りは来月のコラムに残すこととしたい。
私は、特定のモノの価格や需給等に着目することが多いが、連日のように発表されている消費者物価指数、家計調査、設備投資動向、通関統計その他さまざまな指標や統計も、全体的な方向性の確認や今後の予測を行う上で決して無視できない。
一般的にはなじみが薄いかもしれないが、日経商品指数42種という指数が毎月末に、日本経済新聞社から発表されている。
この指標は内閣府の景気動向指数の先行指標にも採用されているが、「モノ」に関する非常に有用な指標として注目している。日経商品指数42種はまさに42種の品目について、1970年の平均価格を100として指数化したものであり、鋼材(7品目)、非鉄(8品目)、木材(4品目)、石油(4品目)、化学(5品目)、紙・板紙(4品目)、繊維(4品目)、食品(4品目)、その他(3品目)の9つの大項目に分類され、各項目の内容は以下のとおりとなっている。
鋼材:棒鋼、山形鋼、H型鋼、冷延薄鋼板、厚鋼板、機械構造用炭素鋼(SC材)、ステンレス鋼板
非鉄:銅地金、鉛地金、亜鉛地金、アルミニウム地金、すず地金、伸銅品黄銅丸棒、伸銅品銅条、金地金
木材:米ツガ正角、杉小幅板、合板
石油:ガソリン、灯油、C重油、軽油
化学:カセイソーダ、ベンゼン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、塩化ビニール樹脂
紙・板紙:段ボール古紙、上質紙、コーテッド紙、段ボール原紙
繊維:綿糸40単、ポリエステル長繊維、ナイロン長繊維、アクリル紡績糸
食品:砂糖、大豆、大豆油
その他:セメント、天然ゴム、牛原皮
幅広い分野の多様な品目が含まれているものの、一般的には耳にしない素材が多い日経商品指数42種だが、10月末に発表された数値が12か月連続で前年同月比、上昇している。参考までに、前回、前年同月比上昇したのは、2012年12月から2014年11月までの2年間であり、その後2014年12月から2016年10月までの約2年間は連続して前年同月を下回った後、上記のとおり2016年11月から再び上昇に転じ、現在(2017年10月実績)に至っている。
直近発表分(10月末)について分野別に見ると、すべての項目で前年同月比プラスとなっているが、内訳をみると、温度差が多少あることが見てとれる。
上昇率が最も高いのは、非鉄の前年比34.0%、最も低いのは木材の1.2%とかなりの幅がある。9つある大項目を3グループ(上昇率が前年比5%以内の微上昇グループ、15%以内の中上昇グループ、15%以上の急上昇グループ)に分けると、最初の微上昇グループに入るのは、繊維、木材、食品、その他の4項目、中上昇グループに入るのは化学、紙・板紙の2項目、急上昇グループに入るのは、鋼材、非鉄、石油の3項目となっている。
繊維、木材、食品といった日常生活に比較的身近な分野については上昇率が低いものの、建設需要の拡大により鋼材や非鉄金属の価格が上昇しており、原油価格の上昇により石油関連の価格も上昇率が高くなっている。
本コラムが出る11月も堅調な株価等を背景に、指数は13か月連続で前年同月比を上回る可能性が高いであろうし、年内はこの調子が続きそうな勢いである。
ちなみに先月のコラムで触れた紙については、前年同月比9.9%と中上昇グループに入っているが、これはおそらく新品の紙ではなく、古紙の価格上昇の影響によるところが大きいだろう。
10月27日に公表された消費者物価指数は前年同月比0.7%の上昇と、あまり景気回復を実感することができないレベルであるが、11月13日に日本銀行から公表された企業物価指数(10月)は前年同月比3.4%上昇と、2017年に入り10か月連続で前年同月を上回っている。日経商品指数や企業物価指数だけでなく有効求人倍率も1.5倍程度の水準を維持していることなどを合わせ考えると、2018年こそ本格的な景気回復期に入るのではないだろうか。
カズノコ、イクラ、クロマグロ、和牛等、年末年始に需要が高まる各種商材の価格動向も気になるところであるが、指数や統計といった情報にも引き続き注目していきたい。