この動産に注目! ― 合成ゴム ―
ドラマチックながらも喧噪な衆院選は超大型台風21号に直撃される中で終わってしまい、ようやく穏やかな秋晴れを楽しめると思いきや、立て続けに台風22号が日本を駆け抜けていき、10月最後の週末もまた雨に流され、すっかりと台無しになってしまった。台風直後のすっきりした青空は期待に裏切らないものだったが、それでも呪われたような雨の多さには驚くばっかりである。これほどの天候不順による農作物への影響は、恐らく食卓にも及ぼすと考えると、思わずちょっとぞっとした気分である。
衆院選が終わったところで、いよいよ国会も車輪を回して再び動き出すが、今度こそ無駄に途中下車せず、最後まで走り切ってほしい。車輪が再び動き出すというと、今回のテーマである合成ゴムもまさに本物の車輪(タイヤ)に欠かせない原料である。合成ゴムは、自動車のタイヤをはじめ、工業用品や電線・ケーブル、接着剤、建築資材など、さまざまな分野で利用されており、日本国内ではタイヤ用に向けた出荷は国内出荷全体の約3割を占めている。タイヤ用合成ゴムの価格はこの頃、下げ基調となっており、一部メディアの調べでは、10月のはじめごろには1キロあたり250円前後(東京の大口需要家渡し価格)と、年初の高値水準から約1割り下がっている。
合成ゴムの価格は製造原料のブタジエンの価格に連動しているが、今年の年初には中国のタイヤメーカーによる買いだめでブタジエンの価格は一時急騰した。しかし、足元では中国における自動車販売が鈍化する傾向がみられ、これに伴って中国のタイヤメーカーによるブタジエンの購入も一巡し、ブタジエン価格の下落につながった。日本国内では、年初のブタジエン価格の上昇につられて合成ゴムの価格も上がり、これを受けてタイヤメーカーによる製品の値上げが行われたが、今後は一転して値下げ圧力が強まる可能性もありそうだ。
ところで、衆院選を経て再び動き出す国会については、今度こそ「消費税10%」を乗せてスピードアップして近づいてくると予想される。消費税アップは避けられないとしても、せめてそれと引き換えに他の政策の実りを見てみたい。消費税増税で確保した財源の一部を子育て世代への投資に充てるというが、それよりも以前に打ち出した待機児童の解消はどうなったかを知りたいところである。
2014年の衆院選では、600億円以上の費用をかかったといわれるが、確かに2016年の政府予算では、待機児童解消の対策として「安心して子どもを産み育てられる環境の整備」にも約600億円を投入していた。もし、今回の選挙費用もその予算に充てたら、結果はどう変わるのか?……無意味な仮定と重々承知しつつも、子供の成長スピードに焦ってしまう筆者は、どうしても浮かび上がってくるこの考えを抑え込むことができない。
(孫記)