QRコードについて
前回はスマホ決済の話を書きましたが、今回はその中のキーテクノロジーのひとつである「QRコード」について。
QRコードは、いまや見かけない日はないというくらい一般的になり、さまざまな場所で活用されています。
QRとは、「Quick Response」の略で二次元バーコードの一種。従来のバーコードは一方向だけに情報を持っているのに対し、二次元コードは縦・横ニ方向に情報を持つ事ができ、記録できる情報量が飛躍的に増加しました。
この画期的なコードは、1994年に自動車部品メーカーの株式会社デンソーが開発し、「QRコード」という名称は株式会社デンソーウェーブが商標登録しました。この際の有名な話として、同社は特許権を所持するものの、QRコードの利用については権利行使をしないと明言したことがあります。QRコードの仕様を自社で独占せずにオープン化し、誰もが自由に使えるコードとすることで、「公共のコード」とすることを考えたのです。その結果が今となり、世界中で利用されるに至りました。このあたりの話に興味のある方は、ぜひデンソーウェーブ社のホームページをご覧になってみてください。(http://www.qrcode.com/history/)
さて、このような画期的なQRコードを我々の生活の中に広く普及させたのは、我が国が世界に誇る「ガラケー」と言われています。2002年にシャープが開発した「J-SH09」というガラケーが、J-PHONE(現・ソフトバンク)から発売され、この機種に初めてQRコード読み取り機能が装備されました。その後のガラケーにはQRコードリーダーが標準装備されることとなり、同時に日本でのQRコードが一気に浸透したようです。
ではなぜシャープは、ガラケーでQRコードを読み取ることを考えたのでしょう?そんな疑問に応えてくれる話がインターネット上にありました。きっかけは携帯電話事業者(J-PHONEでしょうね?)の法人担当部門からの「携帯電話でJANコードを読めませんか?」という技術的な質問だったようです(ガラケーを利用した在庫管理を狙ったのでしょうか。)これに対し、J-SH09はコンシューマー向け商品であったため、法人向けのJANコードよりも、どうせ読み取るならば・・・ということで、オープン規格になっていたQRコードを読み取れる仕様にしたそうです。その結果、キー入力操作が不得手なユーザでも、沢山の文字情報を簡単に入力できるようになりました。雑誌などに印刷されたQRコードを読み取ってWebアクセスできたり、名刺のQRコードから電話帳登録が簡単に行えるようになったことで、QRコードは広く普及、浸透していきました。
そんな人々に支えられて、普及したQRコード。前回も少し触れたように、今ではスマートフォンとQRコードの高い親和性を生かし、QRコードを読み取るだけで代金を支払えるサービスが相次いで登場しています。さらには、スマホをかざすだけで注文と決済を同時にできるサービスも生まれており、フィンテックが日常生活に入るきっかけをQRコードが作っています。今後益々、QRコードの情報量と読み取りスピードを活かしたサービスは生まれてくるものと思われます。
それにしても、自社独占せずに「公共コード」を狙ったデンソーの考えには感服です。私のように、なんでも独り占めしたい欲張り人間には、到底思い浮かばない戦略。これを機会に「大欲は無欲に似たり」とならぬよう、少し考えを改め、気を付けます。
(田中記)