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2017-08-10 注目動産

この動産に注目! ― タングステン ―

 のろのろと進む台風5号はようやく熱帯低気圧に変わる中、東京ではまた炎天に晒されている。朝の出勤で駅から会社までの道のりは例年どおり、ちょっとした罰になってきており、いったい暦上の立秋はなぜこの時期になるかと、筆者にはなかなか理解できない。立秋が過ぎると、手紙や文書などで「残暑」という言葉を使う決まりになっているが、今年の残暑の「残」は9月まで残る予感もある中、美味しいスイカやウナギなどで英気を養い、暑さから逃れられる日を気長に待つしかない。

 8月に入ってから暑くなったのが天気だけでなく、かの話題の仮想通貨のビットコインに関する話題もだいぶ熱くなっている。将来性などが見込まれ、取引が急増するビットコインだが、どうやら当初の設計仕様が現状の取引規模に追い付かず、とうとう仕組み設計で強い力を持つ中国勢の影響により分裂騒動まで発展したようだ。筆者はビットコインの熱気に煽られ、ブロックチェーンやら、マイニングやら、各仮想通貨取引所の違いやら、いろいろと熱心に調べだした矢先のことだけであって、これからその熱気に身を投げ入れるべきかについては、また持病の「悩みに悩む病」が発症している。

 いつも悩みの中で機を逸する筆者の宿命はさておき、今回のテーマであるタングステンに関しては、ビットコインと同様、中国の影響で相場が大きく動いている。レアメタルであるタングステンは、超硬工具や特殊鋼などの原料をはじめ、様々な分野で利用されている。日本で使用されるタングステンは依存に依頼しており、特に最大の生産国である中国への依存度が高い。

 中国では、環境規制を強化しており、今年に入ってからタングステンを生産する工場について排水処理などの環境基準の達成状況について監査を実施し、一部の工場が生産停止に追い込まれたことも伝えられている。また、中国の一部産地では洪水による災害もあり、国際市場における供給不安が強まる展開となった。日刊産業新聞の調査によれば、8月はじめ時点のタングステン酸アンモニウム(タングステンAPT:タングステンの国際価格の指標となる中間原料)の価格(欧州市場、10キロあたり)は約215~225ドルで取引され、昨年末時点の同190~205ドルから10%程度上昇している。日本国内ではタングステンに対する需要が好調に推移しており、その価格が一段と上昇する可能性も指摘されている。

 ところで、タングステンAPTの価格は、10キロあたり日本円換算で約2万円程度だが、上記のビットコインの場合は現在、1ビットコインあたり40万円弱の値がついていることから、約200キロのタングステンAPTを買える計算となる。触ることも見ることもできないパソコン上に存在する数字はどうしてそこまで価値があるのか、デジタル世界の不思議である。果たして触り心地の良い1万円札を「数字」に変えるべきか、金融資産の形成を目論んでいる筆者はまだまだ悩んでいる…… 
 
(孫記)

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