この動産に注目! ― チーズ ―
梅雨に入ってから雨が降るたびに蒸し暑さもレベルアップしており、これから到来する本格的な夏の厳しさを予感させる日々が続いている。7月に入り、梅雨前線に相まって台風も日本に襲いかかってきており、ダブルパンチで九州を中心に雨によって深い傷跡が残された地域も少なくない。筆者の家は、地域の水害防災マップ上、間違いなく水没するところに位置しており、テレビに映されている濁流はまるっきり他人事でもなさそうだ。梅雨明けの強烈な日差しに照らされたくないが、降り注ぐ雨に虐げられる恐れがあるなら、やはり日本の空に居座る梅雨が早く主役の座を明け渡してほしい。
主役の座を明け渡しといったら、この頃に行われた東京都議会議員選挙で自民党が歴史的な大敗を喫し、議会における主役の座から引き下ろされている。この頃の騒がしい政治劇は、新たなドラマチックな展開を迎える中、東京都議会の選挙結果は政府・与党による政権運営にも大きな影響を与えると言われている。こうした状況の中、日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)に関する交渉が進められ、7月5日に交渉が大枠で合意したことも伝えられている。合意の全容はまだ不明だが、ワインやチーズ、自動車などの関税の撤廃や削減で意見が一致したことは確かのようだ。これについて、関係する酪農家などの受け止め方次第、政権に対する不満が広がる可能性もあり、先行きについては目が離せない。
ところで、今回のテーマであるチーズについては、EPA交渉において、ソフト系チーズを対象に最大3万1,000トンの輸入枠を新設し、輸入枠内の関税税率は16年目にゼロにする内容となっている。関税の完全撤廃はまだまだ先のこととはいえ、カマンベールなどのチーズがだいぶ安くなることは、多くのチーズ好きにとって朗報となるかもしれない。日本で消費されるチーズのうち、約8割強が輸入品であり、これまでロシアに続き世界2位の輸入国となっていたが、ウクライナの紛争でEUと対立したロシアがEUからの乳製品の輸入を禁止した影響から、現在は日本の輸入規模がロシアを逆転している。日本による輸入金額は年間約1,000億円を超えているが、このうち約400億円弱が欧州からの輸入となっている。ロシアと輸入シェアの逆転により、世界のチーズ市場における日本の存在感が高まっており、価格交渉でも優位性が強まっているとされる。財務省の貿易統計によれば、2017年5月時点の欧州各国から輸入したチーズの平均単価は約487円と、2016年の年間平均水準(約470円)と比べると、小幅な上昇にとどまっており、当面は輸入価格が安定的に推移する可能性が高いと見方も見方も多いようだ。
筆者には、ナチュラルチーズが好物の1つであり、美味しそうなチーズをみかけると、ついつい買ってしまう。関税の引き下げで価格に意識せず、好きなだけにチーズを買える日が来ることに嬉しく思う。とはいうものの、最も安く買えるのが16年先のこととなっているが、自分の年齢を考えると、急に気が遠くなったような気もする……
(孫記)