この動産に注目! ― ステンレス鋼板 ―
6月に入ってから1週間程度経ち、気象庁の速報によれば、関東地方も沖縄や九州につづき、梅雨入りしているようだ。降水が多い水無月だが、12ヵ月
のうち、唯一祝日が存在しない月でもある。余分の休みがないことから特に長く感じるこの月、しめっぽく蒸し暑い日々の到来が目前に控え、鼻風邪で
未だに鼻水の流れが完全に止まらない筆者にとって、いかに楽しく月末で走り切り、年の折り返しを超えていくのか、ちょっととしたチャレンジとも言
える。
ところで、筆者のちっぽけなチャレンジはさておき、この頃ではイギリスのテロや米国のトランプ大統領を取り巻く「ロシア疑惑」、サウジやエジプ
トなどの国とカタールの断交、イランの国会議事堂の襲撃、北朝鮮による相次ぐミサイルの発射、世界中は何やら騒がしくなっており、大きなチャレン
ジに直面する国や人は少なくない。日本国内でも、「怪文書」について政府と野党のもみ合いがつづき、再調査しないで押し切ろうとする政府のちょっ
とした苦しい言い訳を見ていると、いつお尻に火が付いてもおかしくない状況になりつつあるとの予感すらある。
火が付くと言えば、今回のテーマであるステンレス鋼板も「火」の影響で価格が上昇している。日本国内におけるステンレス鋼の生産能力は、新日鐵
住金ステンレスやJFEスチール、日新製鋼、日本冶金工業などの上位数社に集中しているが、足元では自動車部品や業務用厨房設備向けを中心にステンレ
ス鋼板全体の需要が好調に推移しており、供給が追い付かない状況にあると言われている。
特に業界大手の日本冶金工業の川崎工場では、5月中旬に火災が発生した影響で生産が停止したことから、供給が一段とひっ迫する懸念が高まり、
ステンレス鋼板の価格を押し上げる要因となっている。鉄鋼新聞が公表している冷延ステンレス鋼板の市中相場(東京市場、SUS304、2.0ミリ)をみると、
2017年5月時点で1トンあたり34万円と、前年同月比約13%上昇している。ただ、国際市場ではニッケルなどの原材料価格の下落でステンレス鋼板の価
格も下落基調にあり、今後は輸入品の利用が増加するとともに国産品の価格も影響を受ける可能性が指摘されている。
鉄鋼製品の生産では「火」が欠かせないものの、管理されない燃え方となった時は、生産も続けられなくなる。さて、今話題の「怪文書」についても、
事なきを得るために欠かせない根拠になっているものの、万が一コントロールが効かず、「怪」が「怪」でなくなった時には、事態がどの方向へ収拾す
るのか、「ハウス・オブ・カード」のようなドラマが好きな筆者には興味津津である。
(孫記)